「バーベキューがうまいのは自由になれるからさ」――南の国の“バービー”ナイト郷好文の“うふふ”マーケティング(2/2 ページ)

» 2009年05月14日 07時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]
前のページへ 1|2       

日本のバーベキュー文化とは

 リビングで鉄板焼きをする後藤はどうだろうか? そこにもエレクトロラックス製の小型バーベキューグリル『EAMF70JP』があった。

 グリル両側の天然木製カウンタートップは、調理・収納もできる優れた機能。プレートは鋳鉄ホーロー製で、編み目プレートとフラットプレートがリバーシブルだ。5キロのLPGボンベは本体に収納され、キャスターでも移動できる。後藤は本体に収納可能な蒸し焼きのフタをかぶせて何かを焼いていた。

 「どうだ、そっちは?」と聞くと、「コバヤシさん、上々ですよ」。後藤がプレートをおおったフタを開けると“お好み焼き”が並んでいた。「鉄串でさっとあぶった車海老をたっぷり入れたお好み焼き。ニッポンの味を教えてやろう」。後藤がフライ返しでお好み焼きを返すと、周りから「Oh!」という声が漏れた。


 バーベキューが一段落すると、私と後藤はプールサイド脇のパティオのベンチに腰掛けて休憩した。クリフに建つ邸宅、波音がうるさいほど海は間近だ。グレートバリアリーフを独り占めできる。だが陽はすっかり暮れて、どこから海だか分からない。目をつむり、手を伸ばし、海を感じた。まっすぐ行くと南米、斜め左は北米、もっと左に行くと日本だ。

 「日本から遠く離れたはずなのに、なぜかWagyuのバーベキューを焼いている。変だよな」

 そう私が言うと、「そんなことはない」と隣の後藤は肩をすぼめ、

 「外に出れば出るほど、内にあったことが見えてくる。外に出るからこそ、真ん中に近付いていく。人も食材も自由になって、外の空気をたっぷり吸えば、本来のうま味が出てくるんじゃないかな」

 時々、思わしげなことを言うのが後藤の癖だ。私は深呼吸した。そうだ、バーベキューがうまいのは自由になれるからだ。

 「Good job, mate!」

 後ろからの声に振り向くと、赤ら顔のオージーが歩いてきた。

 「バービーはうまかったよ。日本ではバービーは盛んなのかい?」

 私と後藤は顔を見合わせた。まだ“アウトドア派”なる言葉があるくらいだから、バービーが一般的とは言えない。「準備が面倒」という人もいれば、「煙いのがイヤ」という人もいる。バービーはまだ“キャンプのイベント”だろうか。

 「We have Shichirin」

 後藤の言葉に私はプッと噴き出した。“Shichirin”とは七輪のことらしい。英語では“charcoal stove”とか“portable clay stove”などと言う。

 最近はデザインの良い卓上七輪がある。『SEMITRAD 001』は和室にも洋室にも調和する円錐形のモダンなデザインがポイント。炭を4片か5片、小さな火力で魚や野菜をあぶりながら日本酒をいただく。日本にも素晴らしいバーベキュー文化があるじゃないか。

 小さな国には小さなバーベキューがよく似合う。それはそれで美しい文化である。身の丈にあったことをする、それは決して悪いことじゃない。しかし、自分の“心の身の丈”を知ることが一番難しい。長い旅に出て外から自分を眺めると、それがよく分かる。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.