サービス開始から1年……nimocaはどこまで成長したのか?神尾寿の時事日想・特別編(3/3 ページ)

» 2009年05月13日 07時00分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]
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nimocaの顧客分析システム

――nimocaは交通IC、電子マネーともに他地域の交通ICと異なるアプローチや、より先進的な取り組みが多いと感じます。特に私が注目しているのが、nimocaの会員組織です。nimocaではポイントプログラムを通じて、“ユーザーの顔が見える”会員組織化を当初から積極的に行ってきました。それは今後、どのように活用されていくのでしょうか。

杉本 nimocaでは顧客分析システムを導入当初から用意しています。これがなぜ存在するかというと、加盟店への価値提供のためです。

 加盟店の立場で電子マネーやポイントプログラムを考えると、少し言葉が悪いですが、(加盟店は)お金を取られるばかりです。電子マネーの決済手数料やポイント原資を負担しなければなりません。

――ユーザーはポイントがもらえるから電子マネーを使うメリットがありますが、単純に見れば加盟店側は現金よりもコスト負担が増えるわけですね。

杉本 はい。ですから加盟店を獲得し管理する我々(電子マネー事業者)は、コストに見合うだけのメリットを加盟店に提供しなければなりません。そこで重要な位置づけとなるのが「情報」です。

 nimocaでは約7割のお客様が会員化されていることは先ほど述べましたが、ユーザーの個人情報を除いた形で、その顧客属性情報を用いたマーケティング分析ができます。その顧客分析システムが導入当初から作られており、そこから得られる情報を加盟店には無償提供しています。

nimoca顧客分析システムの画面。加盟店に「情報」を提供することで、手数料やポイント原資負担の見返りにしている。将来的には交通ICを用いたより高度なCRMインフラに成長する計画だ

――nanacoなども同様に顧客分析システムを持っていますが、それと同じようなメリットを、nimoca加盟店は得られるわけですね。

杉本 はい。nimocaの顧客分析システムはWebサービスとして各加盟店から見られるようになっています。これにより加盟店の顧客分析担当者は、(Webサービスに)ログインするだけで自店の顧客動向が分析できます。しかもnimocaは電子マネーだけでなく、クレジット決済や現金決済でも「ポイント付与」を行っていますので、(電子マネー以外で決済した時まで)ユーザーの利用動向が分析できます。

――通常ですと、こうした顧客分析システムの構築は多額のコストが必要になりますが、nimoca加盟店であれば無償で利用できる。これがnimocaの加盟店になり、手数料やポイント原資の負担をする上でのモチベーションになっているわけですね。

杉本 百貨店などが当初からnimoca加盟店になっていただけたのも、この顧客分析システムの提供が大きな理由でした。

 百貨店の場合、リピーターや優良顧客のデータベース化はできているのですが、流動性の高い一見客の“見える化”ができていなかった。そこを(その地域の交通ICである)nimocaの顧客分析システムがカバーすることになったのです。

――今後、この顧客分析システムはどのように発展していくのでしょうか。

杉本 すでにシステム的には可能になっていますが、我々のnimocaは交通ICですので、(公共交通利用により)ユーザーの「移動・行動」がトレースできます。さらに会員情報として「住所」や「顧客属性」が把握できている。これらを組み合わせることで、(各加盟店の)ターゲット層がどのような流動・買い回り傾向があるのかなどを分析データとして抽出できます。むろん、これら(分析データ)は個人情報を含まない形になりますし、運用には厳しい内規を設けます。

――基本的な顧客分析データの提供は無償とのことですが、そうした踏み込んだ形でのマーケティングデータの抽出・分析は、有料メニューになるのでしょうか?

杉本 まだ正式に価格体系などは決めていませんが、有料にする考えです。とりあえず1年間、ユーザーの利用データを収集して、どのようなパターン分析ができるのかを調査している段階ですね。しかし、こうした顧客分析システムの活用は、今後のnimocaにとって新たなビジネス領域になるでしょう。

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