マス広告がスルーされている決定的要因とは?(1/2 ページ)

» 2009年05月03日 07時00分 公開
[中村修治,INSIGHT NOW!]
INSIGHT NOW!

著者プロフィール:中村修治(なかむら・しゅうじ)

有限会社ペーパーカンパニー、株式会社キナックスホールディングスの代表取締役社長。昭和30年代後半、近江商人発祥の地で産まれる。立命館大学経済学部を卒業後、大手プロダクションへ入社。1994年に、企画会社ペーパーカンパニーを設立する。その後、年間150本近い企画書を夜な夜な書く生活を続けるうちに覚醒。たくさんの広告代理店やたくさんの企業の皆様と酔狂な関係を築き、皆様のお陰を持ちまして、現在に至る。そんな「全身企画屋」である。


 日本の社会に「情報流通」というコトバが世間に流通しはじめたのは、1998年あたりだったと記憶する。1999年7月のNTTの新体制スタートでは、「グローバル情報流通産業」を目指すと宣言。あれから10年が経ったわけである。

 では果たして、この10年間に「情報流通」の量はどのくらい増えたのか? そのあたりのことが、経済産業省発表の『情報流通センサス』レポート平成18年版に掲載されている。データは、平成8年から平成18年までの10年間のもので直近10年というわけではないが、一番近い、正確な数値と言うことで掲載させていただく。

ここ10年で約532倍

(1)発信情報量

 各メディアの情報発信者が、1年間に送り出した情報の総量。複製を行って発信した場合及び同一の情報を繰り返し発信した場合も含む量は、ここ10年で何倍になったか?

約97倍

(2)消 費 情 報 量

 各メディアを通じて、1年間に情報の消費者が実際に受け取り、消費した情報の総量は、ここ10年で何倍になったか?

約64倍

(3)選択可能情報量

 各メディアの情報受信点において、1年間に情報消費者が選択可能な形で提供された情報の総量は、ここ10年で何倍になったか?

約532倍

(4)パーソナルメディアに限った選択可能情報量

 PC、携帯電話などのパーソナルメディアだけに限定して、1年間に情報消費者が選択可能な形で提供された情報の総量をここ10年で見てみると?

約6785倍

 日本人1人の人間が情報を取得しようと思えば得ることのできるはずの情報=選択可能情報量は、ここ10年で約532倍になった。数字だけを見ると、NTTグループが宣言したように「情報流通」は、1つのグローバル産業となったようだ。

 ちなみに世界的規模で見ると(米国の市場調査会社IDCによる報告書より)、2007年の1年間に世界で生成・複製されたデジタル情報量は計281エクサバイト。これは、単純計算で500GBのHDD5億6000万個強分。2011年には、その6倍強の1.8ゼッタバイトに達すると見込まれているという。もう、何が何やら想像もつかない。

対象メディアとその普及時期(出典:経済産業省の『情報流通センサス』レポート平成18年版

「情報流通」の可能性を享受できていない

 しかし情報流通量が爆発的に増えたここ10年、ヒトは豊かになったか? が本質的な問題だ。「グローバル情報流通」は、暮らしを便利にはしているが、豊かにしているとは実感できないでいる。「情報流通」の可能性を、残念ながら私たちは享受できていない。

 その虚しさを象徴するのが、年々拡大の一途にある「選択可能情報量=約532倍」と実際に消費された「消費情報量=約64倍」との差である。要するに私たちは、膨大な情報に囲まれながら、そのほとんどを無視しているという点にある。

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