相次ぐ出版社破たん、出版不況を抜け出す術はあるか出版&新聞ビジネスの明日を考える(1/5 ページ)

» 2009年04月30日 07時00分 公開
[長浜淳之介,Business Media 誠]

 出版社の破たんが止まらない。

 去る4月20日にも、手芸関連書籍老舗の雄鶏社(東京都新宿区)が、負債約12億8000万円を抱えて自己破産した。帝国データバンクによれば、同社は1945年創業で、1985年には年商約40億5000万円を計上していた。しかし、出版不況が続く中、趣味・嗜好の多様化により読者が減少。近年の年商はほぼ半減の20億円台にとどまっていたという。

 3月9日にはメディア・クライス(東京都新宿区)も自己破産を申請している。この出版社は2008年8月に加護亜依さんの芸能界復帰エッセイ『LIVE 未成年白書』刊行で、話題を呼んだばかりだった。負債総額は約21億円。

自己破産を申請したメディア・クライス

 3月30日にはユーリーグ(東京都新宿区)が民事再生法を申請した。シニア雑誌『いきいき』や日野原重明著のベストセラー『生きかた上手』で知られた出版社だ。負債総額は約65億円。

 2008年の出版社倒産件数は52社で、過去最多だった2007年よりも3社減ったものの大型倒産が相次ぎ、負債総額は197億2500万円。これは2007年の151億2700万円を約46億円上回っている。

 2008年に破たんした主な出版社には、徳大寺有恒著『間違いだらけのクルマ選び』シリーズや齋藤孝著『声に出して読みたい日本語』の草思社、教科書大手の大阪書籍、『NHKためしてガッテン』シリーズや田原総一朗の本などを発行しているアスコム、自費出版大手の新風舎、雑誌『男の隠れ家』や『頭で儲ける時代』のあいであ・らいふ、PCやビジネス関連書籍の九天社などがあり、それぞれ個性ある出版を行ってきた会社までもがつぶれている。

 中小だけではなく、大手の経営も苦しい。講談社の2008年11月期決算は、13年連続減収で過去最大の赤字。売上高1350億5800万円(前年比6.4%減)、営業損失約62億円、経常損失約52億円だった。出版最大手の小学館も3年連続減収中で、2008年2月期決算は、売上高1413億4400万円(前年比3.8%減)、営業損失11億9900万円、経常利益9億6300万円であった。

 一方で、書店を含む書籍販売業の2008年倒産件数は2007年より8社増の48社。負債総額は297億300万円で、前年の152億5400万円に比べてほぼ倍増している。九州一の書店チェーンで93店あった明林堂書店の負債147億8000万円は、書店業で過去最大であった。また、廃業した弘栄堂書店の吉祥寺店は、日本一『Hanako』を売る店であった。書店の方も力のある店ですら、経営が厳しいことがうかがえる。

 2008年の書店廃業数は1095店と4年ぶりに1000店を超えた。2007年の廃業数951店より144店と大幅増。書店廃業は1997年から2003年まで毎年1000店以上の高水準で推移しており、その後は900店台とやや減っていたが、不況の深刻化で2008年はまた増えた。それにしてもネット販売や大型書店に押されてとは言え、毎年1000店が無くなる書店の経営事情は、商店街の小型書店がもはや成り立ちにくい現状を示している。

       1|2|3|4|5 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.