“カタログ語”から抜け出そう――商品紹介の秘けつとは郷好文の“うふふ”マーケティング(2/2 ページ)

» 2009年04月30日 07時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]
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カタログに掲載するのではなく、買ってほしいから書く

――どんな文章を心掛けているのですか?

藤井 文章については完全に素人でして、もちろん何らトレーニングはしていません。下手でダラダラと長い。文章の長さと頭の悪さは確実に比例すると思います(笑)

 そう謙遜する藤井さん、自前サイトの気楽さで文字数制限もなく、起承転結も考えずひたすら書くと言う。商品への愛情がなければここまで書けない。“自分以外の誰かに(その良さを)分かってほしい”から書くという。

 近頃は、うまく体裁を整えるのが最優先で、カッコ良すぎる文章ばかり。「メーカーのカタログは『品物を売るための文章』『買って欲しいための文章』『分かって欲しいための文章』ではなく、『カタログ掲載という仕事をこなすための文章』になっているものが非常に多い」と彼は嘆く。確かに文具のようなコアな衝動買い商品は、読みたい人は重箱の隅まで読み抜く。あっさり紹介は単なるガイド、労苦をいとわずに書かれたこってり語りが“買い”につながる。

 「いくら自前のサイトでも、当事者のメッセージが伝わらないサイトは『下手』と言うより、何だか『止まった』『無機質な』『寂しい』『やっつけ仕事』な感じがします」(藤井さん)

 カタログやWebサイト制作、外注しても社内外注しても、そこに当事者のメッセージさえ伝われば「上手い」宣伝になる、と彼は語る。文章はヘタでも、日々書き続け、より良い表現に修正すれば評価する人が増えるという。藤井さんのアドバイスをまとめてみよう。

  • 自分が見たい角度・見たい部分の写真を自分で撮影する
  • 体裁(文の長短、形式だけの起承転結)にこだわらない
  • 「分かって欲しい」「分かってくれるかな」と考え続けて書く
  • 書いた後も気付きがあれば、随時修正する
  • 当事者ならではの真剣なメッセージを伝える

語りは“真ん中にあること”を見抜くことから

 なぜ語りは難しいのか? 面倒だから? 知識が足りないから? 効率が悪いから?

 全部YESだが、語れない根本原因は“主語が自分じゃない”から。その商品の真ん中にあることを見抜けるか見抜けないか、「見抜こう」の緊張感があるか、「見抜けた」の充実感があるか。それが語りの原点である。

 当事者意識が薄いと「今ならお買い得です」と在庫を縮小したい売り手の都合を語る。「とても人気がある商品です」は“販売実績”語りに過ぎない。開発者や企画者の“代理人意識”で語れるはずがない。見抜くから撮影ポイントが定まり、伝えたいことが語りになり、主語のあるメッセージになる。

 だがしっかり見抜けば欠点も見えてくる。欠点をどう語ればいいか? 藤井さんは「少々惜しい点(悪い点ではない)がある商品のほうが、逆に紹介しやすいですし、そこをきちんと説明すれば、むしろ安心しておすすめできます」と語る。

 惜しい点も語れば、お客さまの不安を取り除き、売り手の良心も確保される。だが“惜しい点”語りだけだと「惜しいな、改良品を待つよ」と言われるのでご用心。

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