――どんな文章を心掛けているのですか?
藤井 文章については完全に素人でして、もちろん何らトレーニングはしていません。下手でダラダラと長い。文章の長さと頭の悪さは確実に比例すると思います(笑)
そう謙遜する藤井さん、自前サイトの気楽さで文字数制限もなく、起承転結も考えずひたすら書くと言う。商品への愛情がなければここまで書けない。“自分以外の誰かに(その良さを)分かってほしい”から書くという。
近頃は、うまく体裁を整えるのが最優先で、カッコ良すぎる文章ばかり。「メーカーのカタログは『品物を売るための文章』『買って欲しいための文章』『分かって欲しいための文章』ではなく、『カタログ掲載という仕事をこなすための文章』になっているものが非常に多い」と彼は嘆く。確かに文具のようなコアな衝動買い商品は、読みたい人は重箱の隅まで読み抜く。あっさり紹介は単なるガイド、労苦をいとわずに書かれたこってり語りが“買い”につながる。
「いくら自前のサイトでも、当事者のメッセージが伝わらないサイトは『下手』と言うより、何だか『止まった』『無機質な』『寂しい』『やっつけ仕事』な感じがします」(藤井さん)
カタログやWebサイト制作、外注しても社内外注しても、そこに当事者のメッセージさえ伝われば「上手い」宣伝になる、と彼は語る。文章はヘタでも、日々書き続け、より良い表現に修正すれば評価する人が増えるという。藤井さんのアドバイスをまとめてみよう。
なぜ語りは難しいのか? 面倒だから? 知識が足りないから? 効率が悪いから?
全部YESだが、語れない根本原因は“主語が自分じゃない”から。その商品の真ん中にあることを見抜けるか見抜けないか、「見抜こう」の緊張感があるか、「見抜けた」の充実感があるか。それが語りの原点である。
当事者意識が薄いと「今ならお買い得です」と在庫を縮小したい売り手の都合を語る。「とても人気がある商品です」は“販売実績”語りに過ぎない。開発者や企画者の“代理人意識”で語れるはずがない。見抜くから撮影ポイントが定まり、伝えたいことが語りになり、主語のあるメッセージになる。
だがしっかり見抜けば欠点も見えてくる。欠点をどう語ればいいか? 藤井さんは「少々惜しい点(悪い点ではない)がある商品のほうが、逆に紹介しやすいですし、そこをきちんと説明すれば、むしろ安心しておすすめできます」と語る。
惜しい点も語れば、お客さまの不安を取り除き、売り手の良心も確保される。だが“惜しい点”語りだけだと「惜しいな、改良品を待つよ」と言われるのでご用心。
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