コラム
» 2009年04月30日 07時00分 UPDATE

郷好文の“うふふ”マーケティング:“カタログ語”から抜け出そう――商品紹介の秘けつとは (1/2)

最近、カタログに書いてあるようなことしか語れない営業マンが増えているという。そこで商品語りの達人、スミ利文具店の藤井稔也さんに商品を紹介するコツを聞いてきた。

[郷好文,Business Media 誠]

著者プロフィール:郷 好文

マーケティング・リサーチ、新規事業の企画・開発・実行、海外駐在を経て、1999年より2008年9月までコンサルティングファームにてマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略、業務プロセス改革など多数のプロジェクトに参画。 2008年10月1日より独立。コンサルタント、エッセイストの顔に加えて、クリエイター支援事業 の『くらしクリエイティブ "utte"(うって)』事業の立ち上げに参画。3つの顔、どれが前輪なのかさえ分からぬまま、三輪車でヨチヨチし始めた。著書に「ナレッジ・ダイナミクス」(工業調査会)、「21世紀の医療経営」(薬事日報社)、「顧客視点の成長シナリオ」(ファーストプレス)など。中小企業診断士。ブログ→「マーケティング・ブレイン」


 「近ごろ、商品を語る営業マンが減ったよな……」

 コンサルティングの仕事でお邪魔している会社の方が、フトこう言った。自分が売る商品なのに“カタログ語”以上のことを語れない。技術も素材知識も勉強不足。開発背景さえ知らない。ぐっとひき付ける印象深いひとことがない。営業活動はカタログ配布だけ、何でも聞ける安心感のある営業担当が少なくなった。

 語り不足は印刷カタログやWebサイトにも広がる。スペックだけの商品紹介、メーカー支給の画像転載だけのサイト。買わせたいという執念が伝わらない。そこで文具メーカー以上の商品語りで知られる、滋賀県近江八幡市のスミ利文具店の藤井稔也(ふじいとしや)さんに“商品を語る”コツをうかがってみた。

2900字以上に上る商品紹介

――藤井さん、商品紹介を作る時、どんなことに留意されていますか?

藤井 まず、商品に対して自分自身が知りたいと思ったことを書くようにしています。写真撮影も「自分が消費者の立場ならこんな部分が見たい」と思う部分を掲載しているつもりです。デザイン性やインパクト重視のカッコいい写真ではなく、視点にはこだわっているつもりです。

ah_RIMG03001.jpg スミ利文具店のWebサイトから藤井さん撮影の画像を転載

 2009年4月に出荷が始まったばかりのプラチナ『超微粒子 水性顔料インク ブルーインク』。万年筆ファンに喝采を浴びたコアな機能を持っている。通常の万年筆インク(=染料系)とは異なる顔料(=水に溶けない色材)が配合されている。藤井さんはどう紹介しているのか?

 従来は黒しかなかったこのタイプに待望の青が発売され、顔料系インクのメリット(一度乾いたら水に流れない・インクのにじみや裏抜けが少ない・筆跡の保存性の高さなど)を紹介する。そのため筆跡を2つの用紙(画像左のライフ原稿用紙と画像右の輸入コピー紙)に書いて、鮮明度や色を比較。さらに耐水性を実験するため、書いた紙に水をかけて、色落ちやにじみまで報告する。

ah_RIMG030811.jpgah_RIMG03072.jpg

 さらに顔料インクの美しさの素、“超微粒子”の特性をこと細かに記す。「水分が少ないのでペン先をドライアップ(乾燥)させがちなこと」「使わないと万年筆の故障につながるので、年に1度年賀状を書くようなユーザーには向かないこと」「だから、日頃からきちんと万年筆を手入れできること」「使わない場合は完全に水洗いをすること」、そしてプラスアルファの注意事項(キャップの開閉・メンテナンスの仕方など)まで、藤井さんは詳細に書き込む。

 1個1575円のインキの商品紹介の文字数、実に2900字以上に及ぶ。

 一方、メーカーのプラチナの同商品Webサイトはどうだろうか。わずか177字の商品紹介とボトルの外観写真のみ。文字数が多いから良いわけではない。でもコアな商品だからこそ語るべきではないのか。プラチナに悪意はないが、藤井さんの語りの方がよほど販売に貢献している。現に藤井さんの語り書きに感動して「(文具店に行かず)スミ利で買います」という声もネットに目立つ。

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