自分の会社の業績って知ってる? 就活にも“ツカえる”決算のかじり方現役東大生・森田徹の今週も“かしこいフリ”(3/4 ページ)

» 2009年04月28日 07時00分 公開
[森田徹,Business Media 誠]

財務の健全性と信用格付け

 さて、“投資家向け”ならば、ここから長々と財務諸表の読み方の説教が始まるところだが、従業員としてステークホルダーになる就活生には、究極的には事業の成長性などどうでもいいのかもしれない。重要なのは、当該企業がリストラや内定切り、はたまた倒産をするような企業ではないのか、すなわち“財務が健全であるかどうか”である。

 本当にブラックな企業になると「継続企業の前提に関する注記」という、監査法人から「この会社、いつ潰れてもおかしくない」というありがたいお墨付きを得ることになる。だが、継続疑義が付くのはほとんど“終わった企業”なので、ここでは財務諸表を読まずにその予兆を知る1つの術として「信用格付け」について触れておこう。

 「信用格付け」とは、地方自治体や一部の企業など特定の団体(基本的には債券を発行している団体※)を、信用格付け機関がその信用力(財務の安定性)に応じてAAAからDまでに格付けしたものである。やや詳しい読み方は前述の書籍でも触れているが、おおざっぱに言えばA格以上なら安全、BBB格はグレーゾーン、BB格以下なら危なそう……というイメージだろうか。

 信用格付け機関の中で、国内で最も有名なものは格付け投資情報センター(R&I)だ。R&Iの格付けは同社Webサイトで見ることができる(関連リンク)

※株式は公開しているが、債券を発行していない場合には、財務諸表から「自己資本比率(資本÷資産)」などを計算して業界他社や業界平均と比較するのが定石だが、深く掘っていくと本当に財務諸表の“読み方”になってしまって収拾がつかなくなるので、興味がある方は会計系の入門書をあたっていただきたい。
日本企業の格付け一覧(出典:格付け投資情報センター)

 アイティメディアの場合、社債を発行していないので格付けをされていないが、例えば同じソフトバンクグループの中ならば、ソフトバンクテレコムの発行体格付けはBBB格といった感じになる。

 また、この信用格付けを大きな要因の1つとして信用プレミアム(企業が借金を踏み倒す危険性、つまり信用リスクに応じた利回りの上乗せ分)が決まり、普通公社債価格が決まる。だから、日本証券業協会などのWebサイト(関連リンク)で債券価格の売買統計参考値を確認していれば、少なくとも内定切りや自宅待機などといった“貧乏くじ”を引く可能性は少なくなるだろう。

 例えば日本綜合地所の内定切り(関連記事)のケースでは、前述した情報に敏感になっていれば当時資金繰りが相当厳しかったことは相当前から分かった。実際に、これは投資家の間ではかなり有名だったので、被害にあった学生に筆者はあまり同情できなかったという話でもある(いつだったか覚えていないが、内定切りのニュースの前に債券価格を確認したところ、日本綜合地所の3年物普通社債が投げ売りされていて複利利回りが年利50%を超えており苦笑したことがある)。

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