飲食業トップの利益率 日本レストランシステムの強みを分析してみた岡村勝弘のフレームワークでケーススタディ(2/3 ページ)

» 2009年04月27日 16時00分 公開
[岡村勝弘,GLOBIS.JP]

優良企業の3つの価値基準

 今回は、この日レスの戦略について「オペレーショナル・エクセレンス」で検討してみたい。

 オペレーショナル・エクセレンスは、『リエンジニアリング革命』で有名になったコンサルティング会社CSCインデックス社の経営コンサルタント、マイケル・トレーシーと、フレッド・ウィアセーマの提唱した概念だ。彼らは1995年、『ナンバーワン企業の法則』の中で、優良企業の3つの価値基準(基本戦略と同様の考え方)として「オペレーショナル・エクセレンス」「製品リーダー」「カスタマー・インテマシー」を挙げ、一世を風靡した。

 その1つとなる「オペレーショナル・エクセレンス」戦略を取る企業は、生産方法や販売方法など主にオペレーションにおける優位性を構築することで、競合に対し、スピードやコストで打ち勝っていく。特に革新的な製品を生み出しているわけではなく、顧客との緊密な関係性を育んでいるわけでもないが、品質、価格、購買の簡便性、サービスなどを含む総合力によって市場で最高の水準を保つのが特徴であるとしている。

ライフサイクルを意識した業態開発

 さて、オペレーション上の卓越性を測るため、まずは日レスおよび飲食業の主要業務について「店舗運営」「店舗管理」「本部業務」に大別して、特徴を検討してみた。その結果が以下の図表である。

日本レストランシステムの特徴

 個店レベルでの運営から、エリアごとの管理、本部における業態開発や調達まで、全ての業務に効率性が追及されていることが分かるだろう。この積み重ねの結果が、利益率につながっている。

 同社の強さを紐解く鍵の1つは、先ほども少し触れた、「ライフサイクルを明確に意識した業態開発」だ。同社では、それがカレー店であろうと、パスタ店であろうと、同じ厨房設備で運営できるような設計をしている。例えば、Aという業態がその役割を終えても、次に入れ換えるB業態で同じ厨房設備、空調などを利活用できるため、新店の出店コストは改装費など、最低限で済む。仮にすぐに業態を変更したとしても、例えばテナント契約の保証金なども無駄にならない。移転できるのは什器だけではない。日レスでは、アルバイトや社員が、どの業態であっても業務を遂行できるよう、オペレーションを組んでいる。ホール担当と厨房担当という区別すらなく、従事できるようにしているという。これにより、業態変更をするたびに採用や教育のコストをかけなくてよい状態を目指しているのだ。

 飲食業において、規模拡大や効率経営のボトルネックの1つに調理人の確保が挙げられるが、同社ではセントラルキッチンや自前のケーキ工場での集中調理やメニュー数の絞り込みなどによって、これを解消している。それどころか、セントラルキッチンなどにおいても、いわゆる“職人気質”のプロの採用は最低限に抑え、パートタイムの主婦などに調理を任せている。当然、これによって人件費面でのコスト競争力も生まれる。しかも、これらキッチンなどへの投資は、長年の好業績によって得たキャッシュを振り向けており、借入金を無駄に膨らまさないから、支払い利息などの負担が生じず、結果として収益性は、より健全になるという仕掛けだ。

 業態の多さが、ドミナント展開も可能にすることは先に述べたとおりだ。これが物流効率の向上とエリアごとの管理という合理性を生み出している。業態の多さはまた、原材料の利用効率の良さにもつながっている。例えば鶏は加工肉になる前段階の、1羽単位で購入する方が価格が安いが、同社では○○の部位はAチェーンで、××の部位はBチェーンで、残った部分で取ったスープはCチェーンでというように、全社総体で全ての部位を余すところなく使い切るよう、メニューを組み合わせているのだ。

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