手形を渡したら喜ばれた。なぜ?

» 2009年04月16日 19時06分 公開
[金児昭,ソフトバンククリエイティブ]

問題

 上場企業の子会社での話。ご夫婦で鉄工所を営まれている会社に、手形で支払いをしたらとても喜ばれました。どうして喜ばれたのでしょうか?

(1)小切手よりも早くお金になるから

(2)上場企業の子会社と取引があることが信用につながるから

(3)初めて手形を見たから

(4)手形は決済に便利だから

答え

 手形とは、「これを持って行った人に、○月○日にここに書かれた金額を支払います」と約束した証書で、これを「約束手形」と言います。現金には名前が書いてありませんが、手形にはそれを振り出した会社の名前が書いてあります。この手形を銀行に持って行ったとき、「この鉄工所は小さいけれど、上場会社の子会社と取引がある」ことがわかります。金融機関から信用を得ることは、経営的にとても大事です。この手形は、小さな鉄工所のご夫婦にとって現金以上の価値があったのです。よって正解は(2)です。

解説:信用はビジネスの根幹

 手形は、もともと手のひらに墨を塗って紙などに押していました。今でも、印鑑がないときなど、拇印を押すのは、手形の名残です。約束手形を発行する人を、「振出人」と言い、受け取る人を「受取人」と言います。受け取った手形は「受取手形」、支払った手形は「支払手形」です。

 約束手形の上には、「上記金額を、あなた、または、あなたの指図した人に、この約束手形と引き替えにお支払いします」という約束の言葉が記されています。また、手形には支払期日が書いてあって、振出日から支払期日までを「手形サイト」と言います。サイトは3カ月のものもあれば、6カ月以上のものもあります。期日よりも早く現金を得たいときは、銀行に手数料を支払って手形を買ってもらいます。これを「手形割引」と言います。

 支払期日に振出人の口座にお金がないと、その手形は現金になりません。これを「手形の不渡り」と言います。不渡りを出すと、振り出した会社の信用は大きく失われます。通常、不渡りが2回続けば、金融機関から取引停止の処分を受け、その会社は倒産です。

 手形に限らず、ビジネスは信用で成り立っています。「納品された商品の代金は支払う」「借りたお金は返す」という約束が守られるからビジネスが成立するのです。

著者プロフィール:金児昭(かねこ・あきら)

 1936年、東京都生まれ。東京大学農学部農業経済学科卒業後、1961年、信越化学工業に入社。38年間、経理・財務の実務一筋。1992〜1999年、常務取締役(経理・財務、法務、資材担当)。現在、経済・金融・経営評論家。信越化学工業顧問。日本CFO(最高経理・財務責任者)協会最高顧問。30代で会計士試験に3度失敗。落ちっぱなしの公認会計士委員。

 主な著書に『これでわかった!バランス・シート』『「経理・財務」これでわかった!』(以上、PHP研究所)、『お父さんの社交ダンス』(モダン出版)、『私がほしかったダンス用語集』(中経出版)など多数。本書は106冊目。


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