行政と連携した交通ICを目指す――福岡市交通局の「はやかけん」神尾寿の時事日想・特別編(2/3 ページ)

» 2009年04月15日 12時16分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]

福祉割引と乗車ポイント割引で市民の足を目指す

 現在のはやかけんは、「無記名式」「記名式」「定期券」の3種類。これに小児用や、障害者、介護者、福祉割引など、各種割引サービスを適用したカードが用意されている。また、はやかけんは乗車ポイントに対応しており、1カ月間の乗車実績に応じて、乗車料金額に対して基本ポイント 2%と、ボーナスポイントが付与される。ボーナスポイントは前月利用実績が1000円以上3000円未満ならば50ポイント、3000円以上5000円未満ならば150ポイント、5000円以上10000円未満ならば300ポイント、1万円以上ならば500ポイントとなる。獲得したポイントははやかけんにチャージできる。

 「福岡市営地下鉄は『公営の公共交通事業者』ですので、はやかけんは市民の皆さまにとって利用しやすい交通ICカードである必要があります。その中で、特に重視したのが(福祉利用を中心とした)割引サービスの拡充と、乗車ポイントによる利用割引です」(調氏)

 なお、福岡地域ではnimoca・SUGOCA・はやかけんという3つの交通ICカードが並立するが、この中で乗車ポイント制度を導入しているのは、西鉄のnimocaと福岡市営地下鉄のはやかけんの2つになる。首都圏で交通ICの乗車ポイント制度を導入しているのは、東京メトロ、小田急電鉄、京王電鉄など一部のPASMO導入事業者のみ。乗車ポイントはクレジットカード+オートチャージと連携したポイント制度と比べると、万人向けでわかりやすい。首都圏のユーザーからすると、福岡での乗車ポイントサービスの充実は少しうらやましい部分だ。

電子マネーは「行政サービス」展開。FeliCaポケットも活用

 公営の公共交通事業者が行う交通ICサービス。その特徴は、交通ICの付加価値サービスである電子マネーでも現れる。

 「はやかけんの電子マネー戦略は、『行政サービスでの展開』を軸にしています。例えば、市役所など公共施設や、様々な公共サービスでの電子決済に、はやかけんの電子マネーを展開していく計画です。こういった(公共の)場所での電子マネー普及は、我々のような公営の公共交通事業者が推進する領域と言えるでしょう」(調氏)

 一方で、駅ナカ以外の、駅前や駅周辺の商業施設や店舗チェーンの加盟店獲得は、それほど積極的に行う姿勢ではない。福岡では西日本鉄道とJR九州が、それぞれの電子マネーでアクワイアリング業務を行うので、そちらに任せるという方針だ。

福岡市営地下鉄の駅券売機。はやかけん対応はまだ一部にとどまる。今後、IC対応の設備を拡大していく方針だ

 「民間企業の商業施設展開では、(nimocaやSUGOCAなど)民間事業者の加盟店開拓が積極的に行われるでしょう。我々がそこと競争していくという考えはありません。来年には電子マネーの相互利用化が始まりますので、nimoca・SUGOCAの電子マネー加盟店も、はやかけんのご利用者に使っていただけますので。

 しかし、地域の商店街には積極的に(電子マネー加盟店開拓を)展開していきたいと考えています。地域商店街の活性化は、我々が協力させていただく領域だと考えています」(調氏)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.