持家と借家、どっちが得?

» 2009年04月14日 07時00分 公開
[金児昭,ソフトバンククリエイティブ]

問題

会計力1分間トレーニング――身近なギモンから経営分析まで』(ソフトバンククリエイティブ刊)

 共働きで子供のいない30代のAさん夫妻。都内の賃貸デザイナーズマンションで優雅な生活を送っています。その家賃はなんと20万円! Aさんは「買うより借りた方がトク」と言います。

 本当のところ、持家と借家はどちらが得なのでしょうか?

(1)買っても値段が下がるので賃貸のほうが得

(2)安い価格、安い金利なら買ったほうが得

(3)ローンを組むのは面倒なので賃貸のほうが得

(4)賃貸より分譲のほうがカッコいいので買ったほうが得

答え

 損得の考え方は、個人の価値観によって異なってきます。ここでは単純に支払額を考えてみます。20年間、家賃20万円を支払い続けると4800万円です。4800万円のマンションを35年ローンで購入すると、4%程度の固定金利なら、ひと月当たりの返済額はおよそ20万円。35年以上住めば、支払額から考えれば買ったほうが得ですね。購入価格や金利がもっと安ければ、この年数はどんどん短くなります。借金をするなら金利の安いとき、ものを買うなら値下がりしているとき――当たり前のことですが、会社でも家計でもそれが不滅の鉄則です。正解は2です。

解説:個人なら持家もいいが……

 個人の住宅購入は、ライフプランが大事。老後のことなどを考えれば、「20万円も家賃を払うなら買ってしまいなさい」と言いたくなりますが、これが会社となると話は少し違ってきます。

 工場への投資は利益を生み出すために必要ですが、本社ビルにお金をかけても利益への貢献度は小さいので、本社にかかるお金は最小化すべきです。そもそも立派な本社ビルを建てているような会社によい会社はあまりありません。トヨタもパナソニックも、本社は実に質素です。

 不動産の取得について、税金やキャッシュフローからも考えてみましょう。賃借料は経費になりますが、返済金(ローン)で経費になるのは金利部分だけです。さらに建物は減価償却できますが、土地は減価償却できません。つまり、土地を買ったらお金は出ていくのに、税金を支払わなければなりません。さらに、賃借なら不要になれば返せますが、買ってしまった不動産はすぐには売れません。キャッシュフローにも大きく影響するのです。

著者プロフィール:金児昭(かねこ・あきら)

 1936年、東京都生まれ。東京大学農学部農業経済学科卒業後、1961年、信越化学工業に入社。38年間、経理・財務の実務一筋。1992〜1999年、常務取締役(経理・財務、法務、資材担当)。現在、経済・金融・経営評論家。信越化学工業顧問。日本CFO(最高経理・財務責任者)協会最高顧問。30代で会計士試験に3度失敗。落ちっぱなしの公認会計士委員。

 主な著書に『これでわかった!バランス・シート』『「経理・財務」これでわかった!』(以上、PHP研究所)、『お父さんの社交ダンス』(モダン出版)、『私がほしかったダンス用語集』(中経出版)など多数。本書は106冊目。


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