コラム
» 2009年04月14日 07時00分 UPDATE

「名物においしいものなし」は、本当なのか? (1/2)

名物のお土産をもらって「とてもおいしい」と、感じることが少ないのはなぜだろうか? 考えてみれば名物がある地元の人たちが、「その名物を食べている」といった話を聞いたことはない。今回は、「名物土産においしいものなし」をテーマに考察してみた。

[中村修治,INSIGHT NOW!]

著者プロフィール:中村修治(なかむら・しゅうじ)

有限会社ペーパーカンパニー、株式会社キナックスホールディングスの代表取締役社長。昭和30年代後半、近江商人発祥の地で産まれる。立命館大学経済学部を卒業後、大手プロダクションへ入社。1994年に、企画会社ペーパーカンパニーを設立する。その後、年間150本近い企画書を夜な夜な書く生活を続けるうちに覚醒。たくさんの広告代理店やたくさんの企業の皆様と酔狂な関係を築き、皆様のお陰を持ちまして、現在に至る。そんな「全身企画屋」である。


 古い喩(たとえ)に「名物においしいものなし」なんと言いましてーなんて、落語の枕みたいに。不況だ。倒産だ。困ったニュースがあまりに多いので、ここはお気楽に土産話でも一席。

 「名物においしいものなし」とは、名物といわれるものは、えてしておいしくない。名は必ずしも実を伴わないことのたとえであるが……果たしてその真相は。マーケティング的に考察してみたい。名物と言ってもいっぱいある。それぞれの地域で、「名物にうまいものあり」と反論もあろうかと思うので、ここでは「名物土産」というジャンルに絞ってみたい。正確に言うと「名物土産においしいものなし」をマーケティング的に考察する。

おいしいものが少ない名物土産

 まずは、ついつい買ってしまう全国各地の名物土産とは何か、その実態を見てみよう。gooランキングに、「私の好きな全国の名物土産ランキング」があったので転載する。

1位 白い恋人 北海道

2位 長崎カステラ 長崎県

3位 うなぎパイ 静岡県

4位 八ツ橋 京都府

5位 赤福もち 三重県

6位 萩の月 宮城県

7位 鳩サブレ 神奈川県

8位 もみじ饅頭 広島県

9位 東京ばな奈 東京都

10位 ちんすこう 沖縄県

11位 信玄餅 山梨県

12位 草加せんべい 埼玉県

13位 ういろう 愛知県

14位 神戸風月堂ゴーフル 兵庫県

15位 笹だんご 新潟県

16位 きびだんご 岡山県

17位 かもめの玉子 岩手県

18位 芋けんぴ 高知県

19位 かるかん 鹿児島県

20位 南部せんべい 青森県

21位 一六タルト 愛媛県

22位 ゆべし 福島県

23位 羽二重餅  福井県

24位 博多通りもん 福岡県

25位 だだちゃ餅 山形県

26位 吉野の葛餅 奈良県

27位 くるみ餅  宮崎県

28位 八街ピーナツ 千葉県

29位 雷鳥の里 長野県

30位  あわおこし 大阪府

 なるほど、言われてみれば、名前だけは知っている。これぞ、名物だ。この半分くらいは、出張のお土産等で頂戴(ちょうだい)した覚えがある。しかし、私的な感想で申し訳ないが「すごいおいしかったなぁ」って記憶は、あまりない。いただいて食べるのは、それでよしなのだが、取り寄せまでしてもう1回食べたいくらいにおいしいかと問われると、はなはだ疑問である。かと言って決して、拙(つたな)いわけではない。

 要は、名物土産って、特別においしいものは少なく、そこそこのものは山ほどあるのである。では、そういう状況になってしまったのは、なぜなのか。

お客様の意識

(1)おいしいより「どこへ行ったか」が大事。

 “旅行”を選ぶ時に重要視すること(ポイント)は何かという調査によると、当然のことながら「場所」が1番で、2番目に「ホテル・旅館」、3番目に「値段」、4番目に「食事」となる。旅をする人間とっての1番のポイントが「場所」で、味に対する意識が後回しになるなら、土産選びもしかり。「どこへ行ったか」の主張と、その共有が「土産」の基本となる。

供給側の都合

(2)市場が全国区=工業化+流通優先。

 名物になると売れ始める。売れ始めるということは、工業化を進めざるをえなくなる。流通チャネルの開拓が優先になる。するとコンプライアンスが重要になる。昔ほど、味にこだわれない。こだわるのは、安心や安全や、安定した商品供給ということになる。

 工場のラインをそろえたら、その維持のためには、流通チャネルの確保とその維持が必要なために、販促費用と流通マージンが必要となる。そうやって、市場は全国に広がるが……結果、すべてが画一的になって、均質化していく。「まずくない」ことが最低基準となっていく。

 そうなると、一見さんの観光客との接点が重要なので、主要交通拠点での土産店の販売は、一種異様なオーラを放つことになる。そのオーラ込みで、名物土産の市場は成立している。

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