森永製菓の板チョコがスゴイのだ。おのずと買ってもらえる理由それゆけ!カナモリさん(6/6 ページ)

» 2009年04月13日 07時00分 公開
[金森努,GLOBIS.JP]
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「細マッチョ」が訴求するメッセージ

 DAKARAの赤いハートの周りに書かれている言葉が「LIFE PARTNER」。現在、同じ名を冠している商品は「ビタミンウォーター」と「プロテインウォーター」がある。

 LIFE PARTNERはサントリーのWebサイトなどには明確なブランド定義がなされていない。しかし、消費者は、LIFE PARTNERといえばDAKARAと認識している。商品を扱っている社外のECサイトや個人ブログでは、ビタミンウォーターとプロテインウォーターを「ダカラ・ビタミンウォーター」「ダカラ・プロテインウォーター」と表記していることが多い。正確にはDAKARA傘下の商品ではないので、ある意味、勘違いともいえるのだが、それこそがサントリーの戦略だといえる。

 ビタミンウォーターはビタミンC、ビタミンB6、ローヤルゼリーの摂取ができることを訴求している。今回のプロテインウォーターはプロテインの摂取だ。 DAKARAは「排出」を訴求する。そして同じLIFE PARTNERを冠した商品は、「余分なものを排出したら、欲しいものを取り込もう」というメッセージを発信しているのである。

 今回のプロテインウォーターは、「“スタイルが気になる現代人”のための、プロテイン補給飲料」というポジショニングを掲げているが、むしろキーワードはCMで繰り返し表現されている「細マッチョ」ではないか。

 プロテインは筋肉をつけたい人が摂取する栄養素。本来、粉や錠剤で筋トレの後に飲んだり、寝る前に飲んだりして理想の筋肉を育てるもの。それには、ムキムキのイメージ、マッチョなボディビルダー、水に沈むほどたくましくも重々しいイメージがつきまとう。今回のプロテインウォーターのCMでは「ゴリマッチョ」という表現をしている。

 しかし、日本でゴリマッチョの居場所はあまりない。もてはやされるのも、宴会とか、話の種とかだ。世間一般女子に「わーっ、すごい!」と言われても「わーっ、かっこいい!」と言われた経験のあるゴリマッチョは少ないだろう。「ムキムキに抱かれたい!」「マッチョの動く大胸筋にそそられる」という女子はマイノリティ。ゴリマッチョは「日本女子規格」からはみ出てしまっている感が否めない。

 いかにもやってる感たっぷりなゴリマッチョではなく、「意外とあいつ、いいカラダ」というちょっとしたサプライズは、男子には「あいつすげぇじゃん、やべえ」と焦燥感。女子には「あれ、結構かっこいいかも」と好印象を与える。「スリムなのに、脱ぐとそこそこいい筋肉がついてる」という細マッチョの潜在的な人気を見抜いてCMを仕立てたのだろう。

 LIFE PARTNERの旗艦商品、DAKARAは現在のCMでは、脂肪、塩分、糖分の「余分三兄弟」を登場させ、健康的な生活のためによくないものを排出しようとメッセージを送っている。生活習慣を改善したら、次のステップ。「理想のカラダをつくりましょう」ということで「日本女子にもてはやされる、細マッチョなカラダづくり」を提案しているわけだ。

 サントリーは潜在的なニーズを顕在化させ、男子を中心としたターゲットを拡大しつつある。……次の商品とターゲットは深田恭子が映画「ヤッターマン」のドロンジョで目指した、女子の「くびれ」か?

金森努(かなもり・つとむ)

東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道18年。コンサ ルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。

共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダ イヤモンド社)。

「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディ アへの出演多数。 一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。


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