ピーター・ドラッカーは、「マーケティングとは、販売の必要性をなくすことだ」と説いた。その心は、「売り込む(セリング)」のではなく、「顧客のことを理解し顧客の要望に合わせれば、おのずと買ってもらえるようになる」ということだ。その意味では、すべてのマーケティングは顧客志向であるべきである。さらに今日の企業活動では、1人1人の顧客の要望に応えるだけでなく、社会全体の要望に応えることも求められている。
ドラッカー大先生の言葉から大げさに入ってしまったが、森永製菓の展開がすごいのだ。まずは小さなところから。4月7日発売の新商品は、割ってひとくち約20キロカロリー! カロリーをカウントできる板チョコレートだ。
この商品は同社のリリースによると、1枚当たりのカロリーがちょうど200キロカロリーで、きちんと10等分に割れる、ひとくち(ひとかけら)が20キロカロリーの板チョコレート、という。
太りやすい体質なのか、メタボ予備軍と標準のあいだを行ったり来たりして、ダイエットを心がけて体重計の数字に一喜一憂する筆者には、ありがたい商品であることこの上ない。だがしかし、1枚200キロカロリーと、チョコレートのカロリーの高さに改めて恐怖した。ご飯は100グラム当たり168キロカロリー。小さめの茶碗に盛れば110グラム入って185キロカロリーとなる。ダイエットではご飯などの穀類を摂取しない人も少なくないが、そのガマンを一瞬で水泡に帰させる悪魔の 200キロカロリー。なんという甘い誘惑。
リリースには、食べた分や前もって決めた分だけカロリーを把握して食べることができる、便利な親切設計の板チョコレート、とある。
「どうしてもチョコが食べたいけど、食べると止まンなくなっちゃう!」という人、「どれくらいカロリーがあるか分からないから怖くて食べられない!」という人。そんな人には手を合わせたくなるほどの福音だろう。ちなみに筆者は商品写真に感謝の祈りを捧げた。
ちょっと考えれば、「そんなにチマチマ食べられたのでは、もうからないんじゃない?」と思ってしまいがちだが、そんなことはない。上記のように「食べたいけど食べられない」という人のニーズギャップに、この商品はズバリとマッチしているのだ。
売上=客数×客単価である。1人1人がチマチマしか食べなくて、購入量や購入頻度が低く、客単価が上がらなかったとしても、潜在需要をもった顧客数は計りしれない。
「食べたいけど食べられない」という顧客のことを理解し、「セルフコントロールして食べたい」という、顧客の(潜在的な)ニーズに合わせた商品である。
きっと、この商品は「おのずと買ってもらえる」ようになるのではないだろうか。顧客をよく見て、ニーズギャップに応えるという、顧客志向の1つのお手本だといえるだろう。
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