ロックギタリストはなぜ、音楽サイトの編集長になったのか(前編)――BARKS編集長・烏丸哲也さん嶋田淑之の「この人に逢いたい!」(1/4 ページ)

» 2009年04月11日 10時00分 公開
[嶋田淑之,Business Media 誠]

嶋田淑之の「この人に逢いたい!」とは?:

 「こんなことをやりたい!」――夢を実現するために、会社という組織の中で目標に向かって邁進する人がいる。会社の中にいるから、1人ではできないことが可能になることもあるが、しかし組織の中だからこそ難しい面もある。

 本連載では、戦略経営に詳しい嶋田淑之氏が、仕事を通して夢を実現するビジネスパーソンをインタビュー。どのようなコンセプトで、どうやって夢を形にしたのか。また個人の働きが、組織のなかでどう生かされたのかについて、徹底的なインタビューを通して浮き彫りにしていく。


 ロック、ジャズ、クラシック……ジャンルを問わず、世界の音楽市場は今、縮小の一途を辿っている。世界にその名を知られたレコード会社も、ここ20〜30年の間に、次々にその姿を消している。さまざまな情報があふれ、CDショップが乱立する東京でさえも、根っからの音楽好きから見れば、提供される情報の質は、年々低下の一途をたどっている。そんな状況もあってか、若い人々の生活に占める「音楽」の割合は縮小している。

 こうした状況に危機感を覚え、業界の変革と、それを通じた日本の音楽シーンの再活性化を志す人物がいる。BARKS編集長の烏丸哲也さん(48歳)だ。

音楽情報サイトBARKS

 →ロックギタリストはなぜ、音楽サイトの編集長になったのか(後編)

音楽業界の変革を志す元ギタリスト編集長

 BARKS(http://www.barks.jp/)は、洋楽・邦楽、メジャー・インディーズを問わず、ライブ情報、プロモーション・ビデオ配信、楽曲のサンプリング視聴はもとより、独自のインタビュー記事や撮り下ろしのライブ映像ストリーミングなど、多面的な情報配信を行っている音楽サイトである。

 オリコンのヒットチャートでは、邦楽と洋楽の比率が、96:4くらいなのに対して、BARKSでは洋楽情報が全体の30〜40%を占めていることからも、その明確な方向性が見て取れる。

 理系出身ならではの緻密な論理でとうとうと持論を展開しつつも、随所に笑いのツボを潜ませる。烏丸さんは、ユーモアのセンスにあふれた、人間的魅力に満ちた好人物である。

 実は烏丸さんは、若いころギタリストとして活躍していた人物だ。大学生のとき、ロックバンド「幼稚マン コーポレーション」のギタリストとして、ヤマハが主催するコンテスト「EAST WEST」でグランプリを受賞。「T.V.」(ティーヴィー)としてポリスターからプロデビューし、「ザーマスおばさん」「ルックス命」「いかれた女が大好き」、さらには「ROCKNESS」「WAITING FOR YOU」など数々の楽曲を発表したバリバリのミュージシャンである。

ギタリスト時代の烏丸さん(左から2番目)

 烏丸さんは人気音楽情報サイトの編集長として、問題の所在をどこに見い出し、どんな変革を成し遂げようとしているのだろうか?

 本インタビューは前編・後編の2本立てでお送りする。前編では、BARKS編集長としての彼の現在の取り組みを中心に、後編では、彼がなぜギタリストを辞め、現在のような音楽出版の道へと転身することになったのか、そして今後の方向性について聞いていきたい。

       1|2|3|4 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.