在庫一掃半額セール。なぜ半額にしてまで売るの?

» 2009年04月10日 19時30分 公開
[金児昭,ソフトバンククリエイティブ]

問題

 「在庫一掃。すべて値札の半額!」季節の変わり目に洋服店などで、いつも見かける光景です。それにしても、どうして半額にしてまで売ろうとするのでしょうか? 損は出ないのでしょうか?

(1)仕入れ値が半額以下だから

(2)在庫で寝かせておくとお金にならないから

(3)売らないと費用にならないから

(4)在庫が多いと倉庫代がかかるから

答え

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 売れ残りの商品は、仕入れ値を切ってでも売ったほうが得策の場合があります。売れなければ1円のお金にもなりませんが、半値でも売ればお金になります。仕入れた商品(在庫)をお金に変えなければ、仕入れの代金の支払いや給料の支払いができません。

 さらに、利益=売上−費用ですが、この費用は売上に見合ったものしか認められません。つまり、実際は赤字なのに、在庫分は費用にならないため、在庫を売り切らないと、会計上は赤字なのに利益が出ていることとなり、結果、税金を支払わなければいけなくなります。また、倉庫を借りていれば倉庫代がかかります。正解は(2)(3)(4)です。

解説:在庫はお金の塊!

 閉店間近のスーパーでも生鮮食品を半値で売ったりしていますよね。明日になったら売れなくなる商品だったら、半値でも今日、売ってお金にしたほうがよい、というのは分かると思います。在庫一掃セールも同じです。

 もう1つの問題は、「売れなければ費用にならない」ということです。少し、ややこしいので簡単な例で考えましょう。100円で10個商品を仕入れたとしましょう。これを150円で6個売ります。6個売れると売り上げは900円です。仕入れ先に支払うお金は1000円(=100円×10個)ですから、100円赤字が出るような気がします。ところが、会計上は300円(=150円×6個−100円×6個)の黒字が出るので税金がかかります。在庫分が費用にならないということは、在庫に税金がかかっているのと同じことです。売れない在庫を処分すれば、その分、節税になります。

 在庫は、まさに金食い虫。在庫ゼロの経営は、お金を有効に回した効率のよい経営です。

著者プロフィール:金児昭(かねこ・あきら)

 1936年、東京都生まれ。東京大学農学部農業経済学科卒業後、1961年、信越化学工業に入社。38年間、経理・財務の実務一筋。1992〜1999年、常務取締役(経理・財務、法務、資材担当)。現在、経済・金融・経営評論家。信越化学工業顧問。日本CFO(最高経理・財務責任者)協会最高顧問。30代で会計士試験に3度失敗。落ちっぱなしの公認会計士委員。

 主な著書に『これでわかった!バランス・シート』『「経理・財務」これでわかった!』(以上、PHP研究所)、『お父さんの社交ダンス』(モダン出版)、『私がほしかったダンス用語集』(中経出版)など多数。本書は106冊目。


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