DSで生活が便利になる――任天堂・岩田聡社長と宮本茂専務、ゲーム機の現在と未来を語る(2/6 ページ)

» 2009年04月10日 13時10分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]
任天堂の岩田聡社長

岩田 ゲーム人口を増やすために我々が取っていた戦略は、パラダイムシフトとも呼べるビデオゲーム市場のドラスティックな変化を引き起こしました。しかし日本では、このゲーム人口の増加というパラダイムシフトは、ほかのどの国よりも早く起こっていました。そのため我々は、2008年前半には「既存の方法論では、この勢いを持続するのは無理だ」と感じてきていました。

 そこでDSのマーケットを再び活性化させるため、2008年11月1日にDSiをリリースしました(参照記事)。任天堂はDSを「所有者の生活を豊かにするマシン」と位置付けました。DSiは「『1家に1台(のDS)』から『1人に1台(のDS)』へ」を目標として開発されました。

 携帯型ゲーム機は個人で所有するものと普通思われているでしょうから、「『1人に1台』とは妙な目標だな」と思われるかもしれません。しかし私たちの調査によると、1台のDSが家族の複数人によってシェアされているケースが多いことが分かりました。「ゲーム人口を増やす」ためには、「これまで全くゲームをしたことがなくて、WiiやDSを初めてのゲーム体験として購入する」という人を増やすことが大事です。しかし、「所有者の生活を豊かにするマシン」という目的を達成するためには、家族でシェアするものから個人の所有物へと変える流れを作ることが重要です。

 この目的を達成するためのキーワードが「パーソナライゼーション」です。DSiは、ユーザーが各個人のDSiをカスタマイズして「自分だけのDS体験」を創造できることを狙っています。カメラ機能やオーディオプレーヤー機能が付属していたり、「ニンテンドーDSiショップ(参照リンク)」からソフトをダウンロードして保存できたりすることは、「マイDS」のコンセプトを実現するためのアイデアです。DSiは日本ですでに200万台以上売れているのですが、先に話したような変化が起こっており、「1人に1台」の目標へと前進していると思っています。

カメラ機能などを付けることで「自分だけのDS体験」の創造を狙う(左)、2008年1月には1家族あたりユーザーは2.8人、DSは1.8台だったが、2009年1月には1家族あたりユーザーは3.3人、DSは3.1台になった(右)

 海外市場は、日本市場よりも多くの人口を抱えています。潜在的なユーザーに製品の情報を十分に届けるためにはまだ時間がかかるでしょう。人口と販売台数の比率から考えると、DSの成長余地はまだまだありそうです。海外市場は日本市場より大きなポテンシャルを持っているため、日本で2008年前半に起こったようにDSの販売の勢いが鈍ることはまだ起こりそうにありません。しかし、DSをさらに普及させるために、先週、米国・欧州・オーストラリアでDSiを発売しました(参照記事)

人口に対する普及率(左)、海外でもDSiを発売(右)

 ニューヨーク、ロックフェラーセンターの任天堂直営店では、最新のマシンを手に入れるために、多くのファンが列をなしました。米国全体で2400のゲームショップが深夜に開店し、何千人ものユーザーがDSiを手に入れるために何時間も列を作って待っていました。ロサンゼルス、ユニバーサル・シティ・ウォークの旗艦店では米国で唯一、深夜にDSi発売イベントを行いましたが、2000人以上が集まりました。

 速報によると、米国での発売後2日間だけで約30万台が売れたそうです。欧州でも発売後2日間で約30万台が売れたそうです。これは、前バージョンのDS発売時の売り上げを超えています。DSiが世界中で暖かく迎えられたことを示してくれました。欧州での発売時の写真からは、「老若男女に受け入れられる」というDSiのユニークな特性が伝わってきます。

 私たちは、DSの所有者がどこにでもDSを持って行きたくなるようにして、「所有者の生活を豊かにするマシン」というDSのミッションをより進めていきたいと思っています。

DSi販売の様子

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