JR九州の「SUGOCA」が登場――注目するポイントは?神尾寿の時事日想・特別編(2/4 ページ)

» 2009年04月03日 06時38分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]

交通ICは「都市の基本サービス」

九州旅客鉄道 総合企画本部 カード企画室 担当課長の大坪孝一氏

 JR九州における交通IC導入計画は2006年2月から始まった。その年の10月にはJR東日本と同じSuica方式の採用が決まり、ほぼ同時期に導入検討されていた西日本鉄道や福岡市交通局との相互利用化も決まったという。特に福岡市交通局との連携は必須であったと、大坪氏は振り返る。

 「JR九州と福岡市交通局は筑肥線で相互乗り入れのノーラッチ接続※をしています。そのため、この路線では入場と出場が異なる事業者になる。相互利用が実現しないと、この路線が(交通ICで)カバーできなかったのです」(大坪氏)

※接続駅で改札を通らずに異なる鉄道会社の路線に乗り入れること
SUGOCAに対応した券売機はまだ一部。今後は対応機を増やしていく計画だ

 また交通ICの導入自体は、利用者の利便性向上や駅設備のコスト削減という狙いはもちろんあったが、それ以上に「2008年度には全国の主要都市に交通ICが導入される。福岡がその例外にはなりえない」(江頭氏)という判断があった。

 「交通ICが利用できることは、大都市のスタンダードサービスになりつつある。その流れに九州が遅れるわけにはいかなかった。

 また、もう少し実務的な要因として、JR九州は自動改札機の導入が比較的遅くて、当初からIC対応への改修が可能な機種を導入していました。すでに所有している自動改札機が、交通IC用のモジュール追加ができましたので、(SUGOCA導入は)比較的スムーズに進められたのです」(江頭氏)

電子マネー加盟店開拓は他社と競争

Suica電子マネーの利用状況(出典:IC CARD WORLD 2009のパネルディスカッション「2009年、FeliCaビジネスの展望」より。JR東日本副社長の小縣方樹氏が示したもの)

 鉄道・バスなど公共交通向けのIC乗車券機能と並んで、交通ICサービスの目玉になるのが「電子マネー」機能だ。近ごろではJR東日本のSuica電子マネーを筆頭に交通IC系電子マネーの発行数・利用率が急上昇しており、プリペイド方式ではnanacoなど流通系電子マネーと並ぶ2大勢力になっている。

 SUGOCA電子マネーは駅ナカや駅周辺を中心に加盟店を開拓。サービス開始から間もないが、約300店舗で利用可能になっている。駅内はキオスクだけでなく、自動販売機やコインロッカーもSUGOCA対応のものが入っており、他地域で導入が進む最新設備を最初から採用した格好だ。

 「電子マネーサービス開始から間もないですが、やはり駅ナカ店舗での(利用の)立ち上がりは早いですね。キオスクはもちろん、駅ナカのベーカリーなどさまざまな店舗で利用されるようになっています」(江頭氏)

 福岡では西鉄のnimocaと福岡市営地下鉄のはやかけんも電子マネーサービスを展開しているが、加盟店開拓において「お互いの沿線には進出しないといった遠慮はない。例えば、(西鉄の本拠地である)天神エリアでも要望があれば、SUGOCA電子マネー加盟店を展開していく」(江頭氏)という。実際、天神地区にあるビックカメラはSUGOCA電子マネー加盟店だ。

SUGOCA対応コインロッカーもさっそく整備された
駅ナカ店舗は電子マネーに対応している

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