JR九州の「SUGOCA」が登場――注目するポイントは?神尾寿の時事日想・特別編(1/4 ページ)

» 2009年04月03日 06時38分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]

著者プロフィール:神尾 寿(かみお・ひさし)

IT専門誌の契約記者、大手携帯電話会社での新ビジネスの企画やマーケティング業務を経て、1999年にジャーナリストとして独立。ICT技術の進歩にフォーカスしながら、それがもたらすビジネスやサービス、社会への影響を多角的に取材している。得意分野はモバイルICT(携帯ビジネス)、自動車/ 交通ビジネス、非接触ICと電子マネー。現在はジャーナリストのほか、IRIコマース&テクノロジー社の客員研究員。2008年から日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)選考委員、モバイル・プロジェクト・アワード選考委員などを勤めている。


 2009年3月1日、JRグループ第5の交通ICカードとして、九州旅客鉄道(JR九州)の「SUGOCA」がスタートした。ソニーが開発した非接触IC「FeliCa」(参照記事)をベースにし、日本鉄道サイバネティクス協議会の共通規格を用いている。今や日本の交通ICのデファクトスタンダードになった“Suica型”の交通ICだ。

 さらにSUGOCAは、もう1つの注目ポイントを持っている。それは企画開発当初から、同じ九州地区で展開される西日本鉄道の「nimoca」、福岡市交通局の「はやかけん」、そしてJR東日本の「Suica」との相互利用が考えられていた点だ(参照記事)。2010年にこの相互利用化が始まり、福岡をはじめ九州北部の公共交通は4事業者いずれかの“1枚のカードでシームレスに利用できる”ようになる。

SUGOCA記念カード(左)、SUGOCAの一般カード

 今回の時事日想は特別編として、九州・福岡における「SUGOCA」の現状をレポートしたい。

近距離交通エリアを中心にSUGOCAを展開

九州旅客鉄道 事業開発本部 企画部カードプロジェクト担当部長の江頭治喜氏

 九州以外に住んでいると実感しづらいが、SUGOCAの事業エリアは広い。九州経済の中心である福岡県を軸に、佐賀県、大分県、熊本県で展開。駅数は当初6線区125駅(無人駅を含む)からスタートし、2010年には2線区加わり145駅にまで拡大する。沿線人口は約500万人をカバーする。JR九州全体の1日当たりの乗車人員は約80万人だが、このうち約30万人(定期券を含む)がSUGOCA利用の対象になるという。

 「JR九州の事業エリアはかなり広いのですが、その中でも(SUGOCAが展開する)北部九州は首都圏と同じく『近距離交通で鉄道が利用されている』比率が高いエリアになります。クルマの代わりに、電車で通勤される方が多いのです。このエリアにSUGOCAは展開する形になっています」(九州旅客鉄道 総合企画本部 カード企画室 担当課長の大坪孝一氏)

 SUGOCAの種類は、他地域と同じく「定期券」「記名式プリペイド」「無記名式プリペイド」が用意されているが、この地域の特徴となるのが特急電車にも乗れる「SUGOCA 特急定期券」の存在だ。

 「九州北部では福岡とその周辺に離れて都市部が形成されていまして、(特急を使い)県をまたいで通勤・通学するという需要が多いのです。また我々も特定特急券という制度を用意していて、特急の料金自体も安く設定しています。ですから、日常的な『ゲタ電』としてご利用いただいているのです」(九州旅客鉄道 事業開発本部 企画部カードプロジェクト担当部長の江頭治喜氏)

 この特急定期券は利用数自体は他の券種より少ないが、「利用額が大きいので重要性が高い」(大坪氏)のだという。この特急定期券を合わせたすべてのラインアップで、SUGOCAは今年1年で35万枚の発行を目標としている。

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