この問題は数学の世界ではそれなりに有名な話らしいのだが、解はやや面倒臭い。以下の解は『数学100の問題―数学史を彩る発見と挑戦のドラマ』(数学セミナー編集部)を参考にした。(元々の論文は1964年の「Optimal selection based on relative rank」という英文らしい)
今見ている女性の順番をi人目とおく(1≦i≦n-1)。そのとき、1〜i人目までの第i人目の女性の相対順位が、ある数列siの値以下ならば声をかける……というものだ。
こうすれば全体における順位の期待値を最も小さくできる。
siの条件は図の通りだが、nが十分に大きいときには1/eつまり全体の約36.79%番目まではsi=0のことが知られているので、生涯出会う女性の1/3くらいに出会った時点から相対順位がベストの女性を選ぶのが簡易な最適戦略とされている。
解法は割愛したので少し唐突な感じだが、例えば5人の美女にナンパできうるとき、1人目は見るだけ、次の2人(3人目まで)がそれまでの中で最高ならナンパ、さらに次の1人(4人目まで)はそれまでの中の2位以内ならナンパ、最後の1人(5人目)は選ばざるをえない…となる。こうすると順位期待値は2.05番目、つまり平均2番目くらいの美女を手に入れられる。
5人のうち2番目となると「大したことがない」感じがするが、nを無限に飛ばしてもこの順位期待値は3.86950、つまりどんなに美女の数が多くてもこの戦略で平均3〜4番目の美女が手に入れられるということだ。「これは驚くべきことではないだろうか」と当該参考書籍では締めくくっている。(ちなみに、有限回数でない最適停止問題の解は求めるのが難しい。つまり「女は星の数ほどいる」と思っていると、最適な行動ができない)
さて、海辺の美女問題で最適戦略が出てきたので、実際に婚活として行動するときどのような戦略を採るべきか、考えていこう。
先ほどの堀内記者の仮定では、恋愛対象は17歳〜42歳、男性は年下の女性、女性は年上の男性という条件だったが、ここでは自分の年齢プラスマイナス5歳、恋の半径は100メートル(どこかの漫画でそんなことを言っていた気がする)と条件設定し、対象モデルは首都圏在住平均初婚年齢ほどの男女としよう。
そうすると、具体的な計算方法※は省くが、日常生活圏で日常的に接する恋愛対象異性は約21.26人と推定できた。
推定としてはかなり怪しいものだが、合コンなどをしない時、日常生活圏という意味では首都圏平均21.26人というのも感覚的にそこまでずれていないので、これで話を進めよう。
さて、このような中から恋人を選ばず、生活圏外の合コンなどで出会った異性が生活圏内のすべての異性よりも魅力的だった場合、それはどの程度の人なのか計算してみると、22人目でsiが1になるn=80人の時の平均期待値3.55番目程度の人ということになる。
つまり、恋愛結婚で例の戦略※を使えば、80人(生活圏内22人生活圏外58人)の中の3番目くらいを選ぶことができる。全国800万人程度の恋愛対象人数の中ではお山の大将の雰囲気もするが、筆者の小学校の同学年の児童が男女計120人程度だったので、低すぎる数字だとも言えないだろう。学年のマドンナを手に入れたと思っておけば楽しい人生が待っている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PRアクセスランキング