アサヒビールは“パンドラの箱”を開けたのか? うまさの裏側にある不安それゆけ!カナモリさん(2/6 ページ)

» 2009年03月30日 07時00分 公開
[金森努,GLOBIS.JP]

野菜ジュース×炭酸?

 野菜と果汁のミックスは従来路線だが、それに炭酸がブレンドされているのだ。「SPARKLING Vege(スパークリングベジ)」という新製品は、3月16日発売。

 緑茶カテゴリーのトップブランドである「おーいお茶」を主力商品として持つ伊藤園には、伸長する炭酸飲料カテゴリーに目立ったブランドがない。そこで、もう1つの得意技である野菜ジュースのノウハウを生かして炭酸市場に攻め込もうという戦略だろう。

 ニュースリリースが、同社の戦略を端的に伝えており、実に面白い。

 伊藤園が目指したのは、「ターゲット発見」、「ニーズギャップの解消」と「ニーズの掘り起こし」である。

 まず、野菜飲料・炭酸飲料の両カテゴリーともに、既存製品の味わいに「飽き」を感じているユーザー、というターゲットを発見。

 さらに、炭酸飲料ユーザーの中でも「健康」を気にされるユーザーというセグメントに対し、野菜と果実を炭酸飲料にミックスするという新しい味わい、というソリューションを考えたわけだ。

 そして、野菜を20種類、果実を3種類。野菜汁が20%、果汁が30%。350ミリリットル当たり60キロカロリー。というスペックで実現したのである。

 結果として、流行りの炭酸市場へ、ゼロカロリーではないが、「低カロリーなサラリとした野菜系炭酸飲料」というユニークなポジショニングで切り込んでいくわけだ。

 より本格的な「野菜加工食品」としてのポジジョニングを目指すカゴメ。「ユニークな炭酸飲料」としてのポジショニングを目指す伊藤園。

 伊藤園の分析にもある通り、従来のちょっとドロッとしていて垢抜けない野菜飲料というドメインは、昨今のスッキリ流行からすると、大きな伸長は望めないだろう。「本格派」だったり、「野菜だけど炭酸」だったりとドメイン拡張を行うことは、方向性は異なるものの、正解かもしれない。

 今回の野菜飲料戦争は、直接対決ではないものの、どちらが市場に受け入れられ、生き残るか。まずは、実際に試してみよう。

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