その名に恥じない3代目――トヨタ「プリウス プロトタイプ」に乗ってみた神尾寿の時事日想・特別編(1/2 ページ)

» 2009年03月27日 12時34分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]

 2009年、ヒット商品やトレンド商品の上位に必ず入る言葉を今から教えよう。それは「ハイブリッドカー」だ。

 こんなの予想でも何でもない。今年はトヨタの「新型プリウス」とホンダの「新型インサイト」が揃って登場し、市場でぶつかる象徴的な年(参照記事)。すでに発売済みのホンダ インサイトは最初の一カ月で当初計画の3倍以上となる1万8000台を受注する人気ぶりだ。

 この好調インサイトを迎え撃つのが、トヨタのハイブリッドカー「プリウス」だ。1997年に世界初の市販ハイブリッドカーとして登場したプリウスは、約10年余りの時を経て、3代目としてフルモデルチェンジする。

 筆者は富士スピードウェイで、この新型プリウスのプロトタイプに乗る機会を得た。本記事では、プリウス プロトタイプの試乗レポートをお届けする。

プリウス プロトタイプ

まるでEV!? 磨きがかかったモーター走行

 今回の3代目プリウスの特徴は、ハイブリッドシステムの高出力化が積極的に図られたことだ。これまでハイブリッドカーというと低燃費・エコのためにパワーや運動性能ではある程度ガマンを強いられるというイメージがあったが、3代目プリウスではシステム全体のパワーを向上している。

 特に強化されたのが、電気系パワートレイン。モーターの最高出力は60キロワットに引き上げられ、高出力バッテリーの搭載とパワーコントロールユニットの大容量化により、“EVっぽさ”が一段と増した。これにより満充電ならばEVドライブモードで時速60〜70キロメートルくらいまでモーターのみで走れる。さらにアイドリングストップからの立ち上がりでは、モーターから動き出すので振動・騒音ゼロからの出だしになる。これはとても気分がいい。

 今回の試乗コースではEVドライブモードのみで走るコースがあったが、満充電で時速50〜60Kmキープ、エアコンOFFならばモーターだけで4〜5キロほど走れた。

 一方、内燃機関は従来と同じ高膨張比・低燃費指向のアトキンソンサイクルエンジン。しかし、排気量が1.5リットルから1.8リットルに引き上げられた。“エコカー”であることを考えると、排気量アップはポリシーに反するようだが、これにより出力・トルクに余裕が生まれて高速走行時にはむしろ燃費がよくなる。モーターの出力アップで低速・中速域でのアシスト量が増えたため、高速域の燃費改善に効果があるエンジン出力アップと組み合わせると、結果として実用燃費が向上するという狙いだ。

 ハイブリッドカーとしての走りで見ると、街中で多いストップ&ゴーや低速・中速域ではモーターが活躍するシーンが多く、エンジンはむしろ脇役にまわる。都市部で乗る分には、先代よりさらにEVっぽい走りが楽しめそうだ。一方、高速周回路でのテストではエンジンが主役になるが、こちらも先代より出力が上がっているので、パワー不足はあまり感じない。しかし長い加速なのでエンジンを高回転まで回すと、がさつな印象のエンジン音が聞こえてきて、少し興ざめするのが残念なポイントだ。

上質でクールなインテリアデザイン

 デザイン面も見てみよう。外観デザインは先代からのコンセプトをキープしている。やや鋭さを増したが、全体のイメージは「プリウスっぽい」デザインそのものだ。これは空力性能と居住性の両立を突き詰めると自然と行きつくデザインなので、ライバルのインサイトも似たようなシルエットを採用している。細かな点ではヘッドランプが消費電力の少ないLEDに変更されており、小さな2眼プロジェクターが新鮮だ。


 どちらかというと特筆すべきは、インテリアデザインの良さ。「まだプロトタイプなので内装はトヨタクオリティに達していない」と説明されたが、すっきりと清潔感のあるインテリアはとても上質で、クオリティが高かった。ケレン味たっぷりだったインサイトのインテリアやUIのデザインと比べると(参照記事)、プリウスのそれは落ち着きがあって好感度が高い。

 また、個人的にとても気に入ったのが、プリウスのユーザーインタフェース。特に高く評価したいのが、ハンドルのタッチセンサー付きボタンに触れると、センターメーターに透過して浮かび上がる「タッチトレーサーディスプレイ」だ。このデザイン性はとても高く、使いやすい。新設計のマルチインフォメーションディスプレイとあわせて、プリウスのUIデザインはとても先進的で合理的なものになっている。最新のデジタルガジェット好きならついつい頬がゆるむ、クールなコックピットである。


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