なぜ『週刊現代』と『週刊ポスト』の部数は凋落したのか?出版&新聞ビジネスの明日を考える(3/5 ページ)

» 2009年03月25日 07時00分 公開
[長浜淳之介,Business Media 誠]

野良犬のような雑誌ジャーナリズムだったが

 確かに雑誌がなかったら、元木氏が同書で指摘しているように「『田中角栄の金脈問題』も、『創価学会の言論弾圧』も、『桶川ストーカー殺人事件での警察の怠慢』も、山崎拓元幹事長があんなにスケベなことも、多くの人が知ることはなかった」だろう。『週刊現代』が執拗に追っている、大相撲の八百長問題もである。

 時には高額なカネを取材相手に払ってまで入手する、それらセンセーショナルな「独占スクープ」には、別に我々が知らなくてもどうでもいいことも多々あったが、暴くべき社会悪も確かにあったのである。ただ、元木氏の熱いジャーナリスト魂が、雑誌作りの現場に届いているかというと、疑問に思う面もある。

 「出版社に入社するというのは、昔は企業として認知されていなかったので、格落ちの会社に入った気持ちはありました。今は銀行を受けて、商社を受けて、電通や博報堂を受けて、出版社も受けて、内定をもらったところに入る傾向が強いです。優良企業の1つになって人材が変わってきました。東大を出ていなくても試験ができなくても、面白い人材を採れればいいが、なかなかそうはいかない」

 誰もが知るように、総合週刊誌を出している大手出版社社員は人もうらやむ高給をもらっている。上場企業でも社員の平均年収が300万円ほどのところもある中で、今の大手出版社の社員は立派なエリートとも言えるだろう。

 リストラされて次の仕事も見つからない人や、派遣を点々とするフリーターの気持ちを分かれというほうが無理かもしれない。いつのまにか、出版社社員は野良犬から黒塗りのハイヤーの世界にどんどん近づいていってしまったのか。

 「若い編集者たちは人に会いたがらない、取材の面倒なプランを出さない。本当に大事な生の情報は、好奇心を持って人に多く会わないと得られないのだから、ずっとPCばかり見ていてもダメです。何度も原稿を見直して校正している編集者もいますが、時間を区切るために締め切りがある。校正で忙しいは、本質的に忙しいのではないです。新聞や雑誌、インターネットの『2ちゃんねる』まで読んでいては、時間がないのは分からないでもないが、生の情報ではない。企画を立てるには人に会わないと!」

PCは一見情報の宝庫だが……

「2ちゃんねる」の書き込みはほぼ、メディアの素人による、今までなら読者の立場の人たちが書き込んでいるものだ。内容に責任を負う必要がない以上、信憑性(しんぴょうせい)は低い。元木氏のいう「読者と同じ目線でものを見て、企画を立て、取材する。いつまでもアマチュアのプロ」である雑誌編集者・記者とは根本的に異なる。

「マニアックでいい、オタクでいいから好きなことを徹底的に追ってほしい。そういう個性ある人が少なくなった」と元木氏は目を伏せた。例えば元木氏は趣味の競馬を通じて作家の山口瞳さんと知り合い、また落語を通じて立川談志さんと知り合った。ともに、『週刊現代』に連載を頼むことになってヒット企画となったとのことである。

週刊誌編集者は人と会って生の情報をつかむのが仕事

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