『らき☆すた』『true tears』に学ぶ、アニメツーリズムの可能性(2/6 ページ)

» 2009年03月23日 14時00分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

坂田 最近の商工会の活動状況はどうなっているのか。グッズ・特別住民票の販売やスタンプラリーは終わっており、イベントや大きなお祭りもありません。しかし、神社や飲食店にはいまだに多くのファンに来ていただいてますし、商店街を歩いている人もいます。

絵馬を奉納し、参拝数を競う(?)人も(左)、なぜかラーメン屋の経営者(60代)が『らき☆すた』鳥居を作った。クリスマスにはライトアップした(クリックでライトアップした様子に。右)

 グッズ販売やスタンプラリーを通じて、ファンと交流、対話したことで、「鷲宮は楽しい、気持ちいい空間だ」とファンに感じていただきました。そして、『らき☆すた』ファンから『らき☆すた』ファン+鷲宮ファンになってくれる人もいます。この間、(鷲宮町に)引っ越してきた人もいるそうです。

魚屋にて(左)、洋品屋にて(右)

 どうして鷲宮の人気が継続しているのか。鷲宮ではアニメファンという大きなくくりではなく、『らき☆すた』ファンという細分化された趣味を持った人たちが鷲宮神社近くで集まることでコミュニティが形成されています。「ここで友達が70人できた」「みこしをかつぐために引きこもりが直った」という話も実際に聞いております。ミクシィやブログなどで形成されたコミュニティを、鷲宮でリアルな形で生かせるところが大きいのではないでしょうか。

 地域とファンとをつなぐ立場としての鷲宮町商工会の役割ということで一番気を付けていることは、地域内の商業者の中で特定の店だけが利益を得ないような仕組み作りです。絵馬ストラップというグッズは全12種類あるのですが、1店舗で2種類までしか販売できないようにしています。絵馬ストラップの取り扱い店舗は60店舗(商工会の会員は480店舗ほど)で、業種を問わずガソリンスタンドなどでも販売していました。累計で2万2000個売れており、今在庫はないのですが、3月28日から再販します。(1店舗で2種類までしか販売できないようにすることで)「利益をみんなで分配していこう」と(いう意識を生み出し)、妬みや嫉妬がアンチへと変わらないように気を付けています。

全12種類ある絵馬ストラップ

 版権の契約は商工会が一括して行っています。「一社独占や便乗商品などをやらせないように」ということです。「自分たちは作品のイメージも守っていかないといけない」ということで、そういう仕組みにしています。こうしたことで地域全体でファンを受け入れる体制ができたのではないかと思います。

 今後、鷲宮では『萌え』や『アニメ』などをアピールすることで、企業とのタイアップなどを誘い込みたいと考えています。『萌え』というキーワードでは、北海道大学さんと共同で「鷲宮&萌え川柳☆狂歌コンテスト」をやりました。そして今年、ファンを巻き込んで『鷲宮☆物語』というオリジナルドラマも制作しようと考えています。

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