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» 2009年03月18日 11時37分 UPDATE

神尾寿のMobile+Views:注目は「エコシステムの拡大と進化」──iPhone OS 3.0への期待

現地時間の3月17日にAppleが発表した「iPhone OS 3.0」は、iPhoneそのものの商品力や魅力を底上げするだけでなく、「iPhoneのエコシステム」全体が拡大・進化する上で重要な役割を果たす。日本のモバイルICT業界のプレーヤーにとっても、iPhone上で新たなアプリやサービス開発に挑戦する意義は増すはずだ。

[神尾寿,ITmedia]

 3月17日(現地時間)、米AppleがiPhoneおよびiPod touch向けの次期OS「iPhone OS 3.0」で実装予定の新機能を明らかにした。詳しくはニュース記事に譲るが、iPhone OS 3.0の登場は今夏の「次期iPhone」発表と同時になる模様だ。これまでのAppleの流儀にならえば、日本市場向け次期iPhoneと、既存「iPhone 3G」のOSアップデートで、我々日本のユーザーもiPhone OS 3.0が利用できるようになるだろう。

ユーザビリティの着実な改善ではなく、大きな飛躍

 今回のiPhone OS 3.0において、ユーザーの注目ポイントが「コピー&ペースト」対応をはじめとするユーザビリティ向上にあるのは間違いない。“コピペ”非対応であることは、ほかのスマートフォンに対するiPhone 3Gの弱点であったが、iPhone OS 3.0でこれが解消。さらにMac OSでおなじみのSpotlight機能が実装されることで、メールやメモの検索が可能になり、日常域での利便性が大幅に向上する。画面表示サイズに制限のあるモバイル端末では、「賢く使いやすい検索機能」は、ユーザーインタフェース(UI)そのものの補完になる。iPhone OS 3.0のSpotlight機能はローカルのアプリやデータだけでなく、IMAPサーバー内のメールなどネットワーク側のデータも対象になるという。その実装と今後の進化によっては、iPhoneのSpotlight機能はスマートフォンなどモバイル端末のUIに一石を投じるものになりそうだ。

 また、日本市場との親和性という点では、MMSのサポートも注目だ。こちらはソフトバンクモバイルなど日本のiPhone取り扱いキャリアが「iPhone用のMMSアドレスを付与するか」が現時点では不分明ではあるが、もし対応すれば、iPhoneは晴れて“携帯アドレス”を手にすることになる。現在iPhone 3G専用のメールアドレスとして提供されている「i.softbank.jp」でも絵文字対応で日本市場との親和性は増したが、それでもやや中途半端な存在であったことは否めない。例えば、ネットサービスや店頭CRMツールで「携帯アドレスを登録」するような際に、i.softbank.jp非対応であるケースはよくあることだ。今回のMMS対応でiPhoneが携帯アドレスを利用できるようになるメリットは小さくない。

 そのほかにも、Bluetooth機能で要望が多かった「A2DPサポート」を果たしただけでなく、Bonjourを利用してiPhoneアプリでペアリングなしのP2P接続を実現するなど、今回のアップデートはユーザーの不満点を解消してさらに上の“プラスアルファ”の進化をしている。iPhone OS 3.0は着実な機能改善だけでなく、iPhoneの利便性や操作性を大きく飛躍させるものと言えるだろう。

iPhoneエコシステム拡大に、さまざまな布石

 iPhone OS 3.0の注目は、UIや機能面の進化にとどまらない。iPhone用アプリの開発者向けに1000以上の新しいAPIを提供しており、サービス開発とビジネス展開の両面で、開発コミュニティを活性化する。“iPhone エコシステムの拡大と進化”を後押しすることが、iPhone OS 3.0のもう1つの注目ポイントだ。

 特に日本のモバイルコンテンツ産業と市場の観点で重要なアップデートになるのが、決済・課金モデルの変更だろう。これまでのApp Storeでは、コンテンツプロバイダーは「売り切り制」の課金モデルしか利用できなかったが、iPhone OS 3.0ではアプリ内決済機能をサポートするため、追加の有料コンテンツ配信や月額課金モデルが利用できるようになる。これはゲームや電子書籍など「提供型コンテンツ」はもちろんだが、GPSナビゲーションなど実用系の「利用型ソフトウェア/サービス」分野の活性化に効果がある。

 筆者は定期的に家電量販店や携帯電話販売会社幹部への取材を行っているが、今年に入ってからiPhone 3GとiPod touchの売れ行きは「目に見えて伸び始めている」(販売会社幹部)という。現在の販売台数を鑑みると、iPhone OS 3.0の登場時期である今夏に、日本における端末プラットフォームの普及規模が100万台を突破しているのは確実である。今回の課金モデルの拡充とあわせて、iPhone OS 3.0は、日本の携帯コンテンツプロバイダーにとって“魅力的なビジネスの場”になるだろう。

 アプリの進化の観点でも、iPhone OS 3.0の機能強化は重要な意味を持つ。特に筆者が注目しているのが、「マップのアプリ内利用」と「周辺機器との通信/制御」の2つだ。

 まずマップのアプリ内利用だが、これはナビゲーション分野の活性化につながるのはもちろん、それ以上に今後のモバイルICT産業で重要になる“ネットサービスとリアルサービスの連携”を促す効果が大きい。今後、モバイル環境におけるネットのサービスやビジネスは、リアルのサービスやビジネスと重なり合うように連携していく。その時に土台となるのが「地図」と「位置」であり、その上にさまざまな「リアルタイム情報」や「メタ情報」が付加されていく姿になるだろう。今回のマップのアプリ内利用の実現は、iPhone OS上で、こうした次世代のサービスを構築し、マッシュアップさせるための素地になる。

 一方、周辺機器との通信/制御機能は、iPhoneを軸にさまざまなデジタル機器がつながり、ソフトウェアやサービスの連携をしていく“モバイル・ハブ化”の鍵になる。Dockコネクター経由だけでなくBluetoothにも対応し、カスタムプロトコルも開発可能になるので、iPhone/iPod touchの機能拡張以外にも応用範囲が広がりそうだ。ほかのデジタル機器やデジタル家電との連携だけでなく、ウェアラブルなUI分野での応用や、医療・ヘルスケアを筆頭とする生活支援ツールとの連携など、多岐にわたりiPhoneアプリと連携したプロダクトやサービスが登場しそうである。また、BtoBやBtoBtoCのモバイルソリューション分野でのiPhone活用においても、周辺機器との連携機能強化は追い風になるだろう。

iPhoneエコシステムの魅力が向上

 このようにiPhone OS 3.0は、iPhoneそのものの商品力や魅力を底上げするだけでなく、「iPhoneのエコシステム」全体が拡大・進化する上で重要な役割を果たす。日本市場への親和性も高くなり、コンテンツプロバイダーをはじめとする日本のモバイルICT業界のプレーヤーにとっても、この先進的なプラットフォームで新たなアプリやサービス開発に挑戦する意義は増すだろう。

 iPhone OS 3.0の上で、どのようなサービスやビジネスが展開されるのが。次期iPhoneとともに期待である。

著者プロフィール:神尾 寿(かみお・ひさし)

IT専門誌の契約記者、大手携帯電話会社での新ビジネスの企画やマーケティング業務を経て、1999年にジャーナリストとして独立。ICT技術の進歩にフォーカスしながら、それがもたらすビジネスやサービス、社会への影響を多角的に取材している。得意分野はモバイルICT(携帯ビジネス)、自動車/交通ビジネス、非接触ICと電子マネー。現在はジャーナリストのほか、IRIコマース&テクノロジー社の客員研究員。2008年から日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)選考委員、モバイル・プロジェクト・アワード選考委員などを勤めている。


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