“電子マネーの向こう”にあったものとは?――IC CARD WORLD 2009を振り返る神尾寿の時事日想(1/3 ページ)

» 2009年03月17日 00時00分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]

著者プロフィール:神尾 寿(かみお・ひさし)

IT専門誌の契約記者、大手携帯電話会社での新ビジネスの企画やマーケティング業務を経て、1999年にジャーナリストとして独立。ICT技術の進歩にフォーカスしながら、それがもたらすビジネスやサービス、社会への影響を多角的に取材している。得意分野はモバイルICT(携帯ビジネス)、自動車/交通ビジネス、非接触ICと電子マネー。現在はジャーナリストのほか、IRIコマース&テクノロジー社の客員研究員。2008年から日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)選考委員、モバイル・プロジェクト・アワード選考委員などを勤めている。


 3月3日から6日にかけて行われた「IC CARD WORLD 2009」(特設ページ)が閉幕した。今年は会期中の天候に恵まれず、雨天の中の開催になったものの、来場者数は約15万2000人(リテールテック JAPAN 2009/IC CARD WORLD 2009合計)。昨年の来場者数である約16万5000人は上回れなかったが、厳しい景況感の中で好評のうちに終了したといっていいだろう。

 筆者はこの3年ほど、IC CARD WORLDの企画展「FeliCa World」に協力している。今年も初日と3日目にパネルディスカッションのモデレーターを務め、JR東日本副社長の小縣方樹氏、NTTドコモ執行役員の吉川雅喜氏やアイワイ・カード・サービス取締役執行役員の磯邊俊宏氏などと今後のFeliCaビジネスについて議論したほか、会期中にはフェリカネットワークス社長の芳野弘氏のインタビューも行った(参照記事)。また、その合間にはFeliCaなど非接触ICを用いた関連サービスやビジネスの展示を取材して回った。

 そこで今回の時事日想では、今年のIC CARD WORLDを総括しながら、非接触ICを用いたサービスやビジネスの現状と今後のトレンドについて見ていきたい。

パネルディスカッション「2009年、FeliCaビジネスの展望」

JR東日本副社長の小縣方樹氏。日本全国でIC乗車券の普及が進み、相互利用が起爆剤となって電子マネーの利用が増えている、と2008年を振り返り、Suicaを軸にユーザーの生活情報を蓄積し、今後はCRMビジネスを展開したいと語った

アイワイ・カード・サービス取締役執行役員の磯邊俊宏氏。nanacoは2008年に、モバイル版をバージョンアップ、オンラインチャージにも対応した。nanaco会員数は順調に増えており、現金利用者より単価も高いが、店頭でモバイルの促進をするのは難しい。カードと違いお金がかからないのに、想像以上にモバイルユーザーが増えない、と嘆く

NTTドコモ執行役員の吉川雅喜氏。iDとDCMXの最新状況について整理しながら、今後のキーワードとして“広告、パーソナル化、行動支援”を挙げ、「トルカ+iコンシェル」「ワンセグ+トルカ」といった取り組みを紹介した。右の図は“決済以外”の目下最大の成功例、マクドナルド「かざしてクーポン」

フェリカネットワークスブース

フェリカネットワークスのブースでは、おサイフケータイを用いた電子クーポンのソリューションを積極的に展示。端末やサービスの低コスト化にも注力し、中小規模の店舗チェーンでの採用を狙う

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