「活字離れ」はウソ?――本当に本は売れていないのか現役東大生・森田徹の今週も“かしこいフリ”(3/5 ページ)

» 2009年03月17日 07時00分 公開
[森田徹,Business Media 誠]

 また、ここで成長著しい古本市場まで勘案すると、さらに事態は違ってくる。古本販売最大手であるブックオフの機関投資家説明会資料を見ると、同社独自の古本市場規模予想は2000年が630億円、2004年が705億円、2005年が731億円、2007年が798億円と増加傾向にある。恐らく同社のマーケティング資料から引用したもので、同業各社の販売実績から推計したものだろう。

 販売単価を掲載していないかと探してみると、説明会資料の中で「新刊書籍販売額:リユース書籍販売額=5:1」という記述が見つかった。これを目安に古書販売部数を推計※して、先ほどの書籍の額に足し合わせると以下のようなグラフになる。

※販売額を5倍して同年の書籍単価で割る。間の年は線形になるように推計。
書籍と古本の推定販売部数推移

 上のグラフは塗りつぶしたため、ややコッケイな印象になってしまったが、先ほどより上昇率が伸びているのが分かるだろう。ここで先ほどと同じく2003年〜2007年の年平均販売部数増加率を求めると、2.59%の増加。2007年の新書古本合計は販売部数にして10億8937万冊にもなり、2007年1月の推計人口で割ると国民1人当たり年約8.53冊である。図書館などの機関購入もあるから一概にはいえないが、より我々の実感に近い数値といえるだろう。

 古本市場が2000年から2007年までで26.7%成長(ブックオフ推計)していることを考えれば、筆者が生まれた20年ほど前は今より小さな市場であったことは容易に察しがつく。推定が正しければ販売部数の3割をも占める古本の割合は小さくなるのだから、それを考慮に入れた全体の購入数は現在と大差がないだろう。

 ちなみに1977年にさかのぼれば新刊書籍販売部数は7億1669万冊と、現在の7億5542万冊より少ない。人口が現在より10.62%も少ないから、どちらの方が本を読んでいるか一概には言えないが、古本まで考え合わせれば現代人が本を読んでいないということはないだろう。そう、我々は意外と本を読んでいるのだ。

 一応、「最近の若者は……」と言いたくてたまらない方へのフォローとして補足しておくと、現代の方がコミック比率は高いであろう(販売金額ベースで2000億円規模なので全体の20%を超えるほど)から、あまりほめられたものではない。だが難しい本を読まない人は1970年代にもいたはずで、その手の読者層は読みやすい小説などを読んでいたのではないだろうか。ただ、そうして考えると「そもそもどこからが読書だ?」という話になって収拾がつかなくなりそうなので、邪推はこのへんにしておこう。とはいえ、コミック単行本市場もここ十年で漸減傾向なので、漫画が部数増加をもたらしているわけではない。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.