京都伝統のコンテンツを生かせ――着物柄の名刺をプロデュース郷好文の“うふふ”マーケティング(1/2 ページ)

» 2009年03月12日 07時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]

著者プロフィール:郷 好文

マーケティング・リサーチ、新規事業の企画・開発・実行、海外駐在を経て、1999年より2008年9月までコンサルティングファームにてマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略、業務プロセス改革など多数のプロジェクトに参画。 2008年10月1日より独立。コンサルタント、エッセイストの顔に加えて、クリエイター支援事業 の『くらしクリエイティブ "utte"(うって)』事業の立ち上げに参画。3つの顔、どれが前輪なのかさえ分からぬまま、三輪車でヨチヨチし始めた。著書に「ナレッジ・ダイナミクス」(工業調査会)、「21世紀の医療経営」(薬事日報社)、「顧客視点の成長シナリオ」(ファーストプレス)など。中小企業診断士。ブログ→「マーケティング・ブレイン」


 この不景気でも観光ブームに沸いているのが古都・京都。2007年に京都市を訪れた観光客数は4944万人で、7年連続で増加している(関連リンク、PDF)。2008年には京都市の目標である観光客数5000万人を達成できるかもしれない。雅な風情を求めるシニア層や女性客が増加、そして日本に訪れる外国人観光客の10人に1人以上が京都にやって来るという。

 当然、地元経済もホクホクのはずと思いきや、観光の実態は“京都パッシング”であるという。「観光客は増えても、地元への実益が少ない」というのだ。京都の魅力をさまざまな媒体で伝えてきた株式会社のぞみの藤田功博 (ふじた・たかひろ)社長がそのウラ事情を説明してくれた。

京都をスルーするおカネ

 「ほとんどが東京や名古屋の資本に消えているんですよ」

 東京から京都に1泊2日で旅行する丸の内OLがいるとしよう。旅行代金のうち、交通費(新幹線代)はJR東海に落ちる。宿泊費はパック旅行だと「ウェスティン都ホテル京都」や「グランヴィア京都」、「京都ホテルオークラ」などに泊まることが多いが、いずれも外資系や東京資本のホテルである。つまり、旅行代金の大半が地元に還元されていないのだ。

 それでは飲食店はどうか。藤田さんたちが“京都の味”を掲げる店に取材を申し込むと、「東京の広報に連絡してください」とよく言われるという。地元の店だと思っていたのに、実は東京の飲食企業が経営していることが多い。移動も宿も食も地元にはカネが落ちない。京都というブランドは栄えても、地元が栄えずほかの大都市に吸い上げられる。余談だが寺社への参詣者が増えても、宗教法人の税率は低いので税金も増えない。

株式会社のぞみの藤田功博社長

和札/WAFUDAの魅力

 「僕らは京都が好きなんです。旧跡や伝統だけを魅力にする観光地と違い、京都はクラシックな良さとモダンさがミックスしています。任天堂、京セラ、ローム、オムロンなど革新企業も多い。新しい取り組みの地でもあります」

 好きな“京都コンテンツ”をとことんプロデュースしよう。地元の真の老舗※の魅力を広め、地場産業や技のすごみを伝えよう。京都のために尽くして、地元に実益をもたらそう。藤田さんはそれがのぞみの「使命」だと考えている。

※藤田さんによると、一級の老舗は100店舗ほどという。

 2008年2月4日から発売した『和札/WAFUDA』がその1つ。キャッチフレーズは「伝統を、手のひらに。京都から発信する新しい名刺のカタチ」。

 裏面に伝統の着物の柄を施した和の名刺。地元の工房(現在5社)が持つ着物柄、また新しい配色をのぞみで加えたデザインもある。着物文化の継承、和柄の楽しみを広めるのが狙いだ。全114種類どれも美しいが、私はアトリエひとしほの『流れ桜』にひかれた。桜が流れるようにはらりと散ってゆくさまに、わびとモダンの結合を感じた。100枚2625円(表面モノクロ/裏面カラー)と3150円(表面カラー/裏面カラー)。ビジネスの滑り出しは上々で、東京・神楽坂の舞妓さんからも注文があったとか。

和札/WAFUDA(左)、アトリエひとしほの『流れ桜』(右)

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