インタビューの最後、「10年先、20年後、藤沢さんは、どうなっているでしょう?」という定番の質問をしてみたところ、藤沢さんならではのユニークな返答が返ってきた。
「う〜ん、難しい質問ですね。質問に対する答えになっていないと思いますが、将来のことをあえて語るのであれば、200年のロングスパンで考える必要があると思います。
今から200年前、1809年のことを考えてみてください。会社なんてなかった。日本という国のありかたも、今とはまったく違いました。では200年後は? 現在のような会社制度も、あるいは国家のシステムも、今とはまったく異なったものになっているでしょう。そもそも、会社も国もなくなっているかもしれません。
200年先の世界や日本が一体どうなっているだろうかと考え、そこから翻って現在の世界や日本を眺めてみるとどうでしょうか?(誤解を恐れずに言うならば、)今現在、世界や日本が抱えている問題の9割が、実はムダなのではないか、とも言えるのです。
現代日本人の1人ひとりを見てみても、誰も彼もが問題を抱え込み過ぎていて、しかも、他人と同じ問題を抱えてしまっている。それって、実にムダなことではないでしょうか? もっとシンプルに生きればいいと思うんです。自分なりのテーマを1つ持って生きればいい。そんな風に人生を歩んでほしいものです」
「200年先を見据えて、今を考えよ」という藤沢さん。筆者はそれを聞いた瞬間、彼の子供時代の夢が、地球物理学者になることだったことを思い出した。
宇宙の長い歴史、地球誕生後の歴史から見れば、この世の中のひとつひとつの現象など、取るに足らないものだろう。そういう大きな視点から日本社会や世界の動向を眺め、その中に自分自身を位置づけようとする藤沢さん。物理学者は研究や思索を深める中で、しばしば大自然の悠久や人智を超えた神の摂理に思いを致すものだが、藤沢さんの世界観や経営観にも、それと似た部分があるのではないか、筆者にはそんな風に思えてならなかった。
まだ33歳と年若い藤沢さんが、これからどんな風にして、日本社会に新しい“三等重役”旋風を巻き起こしてくれるか、楽しみに見守り、陰ながら応援したい。
1956年福岡県生まれ、東京大学文学部卒。大手電機メーカー、経営コンサルティング会社勤務を経て、現在は自由が丘産能短大・講師、文筆家、戦略経営協会・理事・事務局長。企業の「経営革新」、ビジネスパーソンの「自己革新」を主要なテーマに、戦略経営の視点から、フジサンケイビジネスアイ、毎日コミュニケーションズなどに連載記事を執筆中。主要著書として、「Google なぜグーグルは創業6年で世界企業になったのか」、「43の図表でわかる戦略経営」、「ヤマハ発動機の経営革新」などがある。趣味は、クラシック音楽、美術、スキー、ハワイぶらぶら旅など。
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