1人シリコンバレー創業プロジェクト、そして――藤沢烈さん(後編)あなたの隣のプロフェッショナル(3/5 ページ)

» 2009年03月07日 05時40分 公開
[嶋田淑之,Business Media 誠]

1人シリコンバレー創業プロジェクト

 2003年にカスケードを立ち上げた藤沢さんは、現在へと続く「イノベーティブな若手経営リーダーを育てる」仕事に取りかかってゆく。

 ベンチャー企業のテイクオフ支援、そして、若手リーダーを育成する団体の支援。藤沢さんのカスケード時代を特徴づけるプロジェクトとして知られるものに、「1人シリコンバレー創業プロジェクト」がある。

 「起業したことのない若い人に、最大1億円出資するプロジェクトです。ワークスアプリケーションズ、レオス・キャピタルワークス、ジャフコとの合同プロジェクトで、カスケードが運営責任を負っていました」

 世の中にはさまざまなビジネスプランコンテストがあるが、そこで優勝しても、百万円台の出資や融資が得られれば良い方だ。そういう意味で、この1億円という数字は、大きなインパクトがあった。

 2005年2月に公募を開始、337件のエントリーがあり、ソニーの服部恭之氏が最終投資決定まで残った。そして創業されたのが、株式会社コネクティである。服部氏は、ほかの応募者とどこが違ったのだろうか。

 「エントリーしてきた方々は、大部分が大企業のマネジャー・クラスでしたね。服部さんもまさにそうなのですが、彼の場合は、時代の変化の予兆を(机上ではなく)現場で読み取り、そうした変化に即応したイノベーティブなビジョン、戦略を構想していました。

 そして、ビジネスエリートらしいスマートさと同時に、企業経営に必要な泥臭さをちゃんと持ち合わせていましたね。『1カ月で20人の見込み客と会ってきて、サービスのニーズを聞いてくる』という課題が出たことがあったんです。服部さんは実に30人以上と会い、しかもその間、4日くらいしか、まともに寝なかったっていうんですから」

司会をしているのが藤沢さん

エゴは罪悪ではない

 2007年5月、カスケードからスピンアウトする形で、藤沢さんは株式会社RCFを立ち上げた。インタビュー前編では、その活動の一端に触れたが、経営コンサルティングを行う上での「勘」の重要性について、そこで彼は言及していた。それに関連して、とてもユニークな持論を展開している。

 「私は、頭で考えたことと、心で思ったことを分けるようにしているんですよ。そして心で思ったことを重視するようにしているんです」

 しかし、心で思うことというのは、しばしば、自分のエゴだったりするのではないか?「その通り、エゴです。日本人にはエゴを罪悪だと思っている人が多い。でも、エゴは決して悪いことではありません。自分のエゴを信用し、それを生かすための環境作りをする努力が大切なんです。そうすることで、生きることが楽になり、ストレスがなくなるんです。

 たとえば、マッキンゼーでの2年間は、私にとっては、大きなエゴのために小さなエゴを抑えた期間だったと考えています。また、現在、コンサルテーションの契約を、3カ月単位にさせてもらっているのも、3カ月なら全力で疾走できると考える私のエゴを通させてもらっているわけです。あと、神谷町のこのオフィスに移ったのも、勘の冴えを良くするために毎日2回の昼寝をしたいという私のエゴからなんですよ」

 なるほど、藤沢さんの場合「エゴ」を通すことが、契約先に対する成果レベルを高めることにつながっているようだ。「エゴは罪悪」という旧来型の分別を働かせて我慢を重ね、結果、成果レベルが低いなら、顧客からの信頼を失うわけで、双方にとって大きなマイナスでしかない。エゴはその使い方次第で、双方にとって大きなメリットになり得るということだろう。

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