愛読書は? と聞かれ、この3冊を挙げた理由山崎元の時事日想・出版&新聞ビジネスの明日を考える(1/3 ページ)

» 2009年03月05日 07時00分 公開
[山崎元,Business Media 誠]

著者プロフィール:山崎元

経済評論家、楽天証券経済研究所客員研究員、1958年生まれ。東京大学経済学部卒業後、三菱商事入社。以後、12回の転職(野村投信、住友生命、住友信託、シュローダー投信、バーラ、メリルリンチ証券、パリバ証券、山一證券、DKA、UFJ総研)を経験。2005年から楽天証券経済研究所客員研究員。ファンドマネジャー、コンサルタントなどの経験を踏まえた資産運用分野が専門。雑誌やWebサイトで多数連載を執筆し、テレビのコメンテーターとしても活躍。主な著書に『会社は2年で辞めていい』(幻冬舎)、『「投資バカ」につける薬』(講談社)、『超簡単 お金の運用術』(朝日新書)など多数。ブログ:「王様の耳はロバの耳!


 『日経ビジネスアソシエ』の3月3日号の第2特集は「今こそ、名著・古典に学ぼう!」というタイトルで、多くの人の愛読書を紹介する内容だった。その中に、この雑誌の連載執筆者が「座右の書」を3冊まで答えるアンケートの結果が載っていた。筆者も3冊の本を挙げたので、今回はその3冊について少し詳しく説明してみたい。

 愛読書を問うという質問は、言い換えると「あなたはどんな本を愛読書としている人と見られたいか?」という意味だ。特集記事に掲載されていたほかの方の回答を見ると、サイバーエージェントの藤田晋社長はジェームズ・C・コリンズ、ジェリー・I・ボラスの『ビジョナリーカンパニー』、民主党の長妻昭代議士はマックス・ウェーバーの『職業としての政治』を挙げておられて、なるほどと思わせる。

 この質問に対する回答としてどうにも頭から離れないのは、長妻さんと同じ民主党の岡田克也副代表が雑誌の取材で愛読書を問われたときに、「同じ本は2度読まない」とだけ答えたことだった。頭のいい合理的な方だから、確かに同じ本を再読することはないのかもしれないが、もう少し質問の意図をくんで答えても良かったのではないかと思った。遠からず日本の首相になるかもしれない可能性のある方なので、もう少し他人の心を読むサービス精神を持て、と注文を付けておく。

ショーペンハウエルの批判に影響を受けた筆者

 さて、いくらか過剰気味の自意識を持ちつつ筆者が挙げた3冊は、ショーペンハウエルの『読書について』(岩波文庫)、ミルトン・フリードマンの『資本主義と自由』(日経BP社)、本多勝一氏の『日本語の作文技術』(朝日文庫)だった。

 体系的に読んでいるわけではないが、高校生のころから哲学の本は割合よく読んでいる。学生のころは哲学の本を読んでいて、新しい哲学(30年前だと、実存主義よりは構造主義という具合に)の方がいいと思う意識があった。そのうちにどのみち哲学は完成しないし、古いものでも哲学者の思考や言い分自体が面白いと思うようになった。哲学の本は理論を学ぶというより、読み物として読んでいた。そうなると文章のうまい(と筆者が思う)哲学者のものが好きになる。哲学思想的にはバラバラだが、プラトン、ギルバート・ライル、ショーペンハウエルなどがこの系統だ。ショーペンハウエルは悪口の言い様が小気味よく、何となく波長が合うし、読んでいて元気が出る。

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