インタビュー
» 2009年03月02日 15時19分 UPDATE

神尾寿の時事日想・特別編:Suicaのイノベーションはどこまで続くのか――JR東日本 椎橋章夫氏に聞く (1/4)

2001年の商用サービス開始以来、日本のICカード市場を牽引してきた「Suica」。乗車券だけでなく、電子マネー展開、携帯対応なども積極的に進めているが、JR東日本が目指すものは何だろうか? 2008年の総括と2009年の展望を聞いていく。

[神尾寿,Business Media 誠]

著者プロフィール:神尾 寿(かみお・ひさし)

IT専門誌の契約記者、大手携帯電話会社での新ビジネスの企画やマーケティング業務を経て、1999年にジャーナリストとして独立。ICT技術の進歩にフォーカスしながら、それがもたらすビジネスやサービス、社会への影響を多角的に取材している。得意分野はモバイルICT(携帯ビジネス)、自動車/交通ビジネス、非接触ICと電子マネー。現在はジャーナリストのほか、IRIコマース&テクノロジー社の客員研究員。2008年から日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)選考委員、モバイル・プロジェクト・アワード選考委員などを勤めている。


 2001年11月の商用サービス開始以来、日本のICカード市場を創出し、牽引してきたのがJR東日本の「Suica」だ。同カードはソニーの非接触IC技術である「FeliCa」をベースにした交通ICカードの草分けであり、FeliCa関連市場の創造と成長において多大な貢献をしてきた。今や日本・アジアを代表とする国際的な非接触ICカード技術となったFeliCaにとって、JR東日本は“育ての親”といっても過言ではないだろう。

ay_suica01.jpgay_suica02.jpg カードタイプSuica(左)と、おサイフケータイで利用できるモバイルSuica(右)

 Suicaは、公共交通のイノベーションにも大きく寄与した。

 “かざす”だけで電車・バスに乗れて、細かな運賃計算や小銭の用意が要らない。Suicaを筆頭とする交通ICカードの利便性は、公共交通の利用を快適にし、人々の生活をより豊かにした。これは首都圏をはじめ交通ICカード導入地域の多くで、近距離公共交通の利用が活性化したことでも分かる。

 またSuica電子マネーなど交通系電子マネーは、駅ナカ・駅ウエ展開からという“地の利”を生かして急成長。発行枚数と利用率ともに、nanacoなど大手流通系電子マネーと並ぶ「電子マネーの双璧」になった。昨今は交通系電子マネーと連動したポイントプログラムも広がっており、これらは駅前経済圏を語る上で重要なツールになってきている。

 そして2009年、交通ICカードと鉄道ビジネスの革新を牽引してきたSuicaは、どのような方向を目指すのか。本インタビューでは、東日本旅客鉄道(JR東日本) IT・Suica事業本部副本部長企画部長の椎橋章夫氏に話を聞く。

モバイルSuicaの拡大――新幹線対応、カードとの差別化

 近年のSuicaにとって、最も大きなトピックスが「PASMOとの相互利用開始」だった(参照記事)。2007年3月、SuicaとPASMOの相互利用が始まり、首都圏の交通ICおよび電子マネーの利用が爆発的に拡大。それまで800万トランザクション(処理回数)※だった処理回数は、2000万トランザクションまで急増した。Suica発行枚数にも弾みがつき、2009年1月時点では約2724万枚(モバイルSuica会員 約138万人を含む)に達している。Suica対応駅でのIC利用率は、Suica/PASMO相互利用開始前は50%前後だったものが、現在は78%弱にまで向上した。

※Suicaのトランザクションには、定期券の区間内利用数は含まれない。公表されたトランザクションは、すべて定期券を除くIC乗車券として利用したもの、あるいは電子マネーとして利用したものの回数を指す。
ay_suica03.jpg JR東日本、IT・Suica事業本部副本部長企画部長の椎橋章夫氏

 電子マネーも相互利用開始の影響を受けて利用率が急上昇した。特に2008年に入ってからは、PASMO加盟店の拡大が進んだこともあり、Suica電子マネーの利用も一気に拡大した。2009年1月末時点には1日あたり約134万件の利用件数に達し、Suica/PASMO相互利用開始前の約41万件/1日と比べて、利用件数は93万件も伸びた。

 そのような中で椎橋氏は、「2008年はモバイルSuicaの新幹線対応が始まったことが、大きな出来事だった」と振り返る。2008年3月から始まった、「モバイルSuica特急券」サービスのことだ(参照記事)

 「Suica(など交通IC)は、これまで在来線のためのサービスでした。しかし、モバイルSuica特急券が始まったことで、新幹線でも使えるようになった。当初計画ではモバイルSuica特急券の利用は会員全体の約2割と見込んでいましたが、サービス開始から約1年が経過し、この数値もほぼ達成できています」(椎橋氏)

 2006年1月からスタートしたモバイルSuicaは、これまでも“ケータイで電車に乗れる”他機能で便利なサービスとして訴求されてきたが、カード型のSuicaとの差別化で苦労してきた。しかし、昨年のモバイルSuica特急券の開始で、「モバイルSuicaならではのメリットが、非常に分かりやすい形になった」(椎橋氏)という。

 2009年3月1日からは、モバイルSuica特急券限定の事前指定型割引商品「スーパーモバイルSuica特急券」(スーパーモバトク、参照リンク)を秋田新幹線と山形新幹線に設定。利便性だけでなく料金面でもモバイルSuicaのメリットを強く打ち出し、カード型SuicaからモバイルSuicaへの移行を促していく計画だ。

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