コラム
» 2009年03月01日 00時00分 UPDATE

4人の編集長が語る「ネット化が進むビジネス誌の現状、そして明日は?」 (1/4)

ここ数年、『週刊ダイヤモンド』『週刊東洋経済』『プレジデント』といった老舗ビジネス誌が積極的にWeb展開を進めている。Webビジネスの難しさとは。また、紙媒体から移行して感じるネットメディアの特徴とは?――今、まさに現場で変化を体感しているオンラインビジネス誌4誌のキーパーソンが一堂に会し、座談会を行った。本記事ではその様子を詳しくお伝えする。

[堀内彰宏,Business Media 誠]

 金融危機など、世界や日本の経済の話題について、そして業界動向から企業情報、投資情報――新聞やテレビのニュースよりも、専門性が高い情報を必要としているビジネスパーソンにとって、ビジネス誌は欠かせない。ここ数年、さまざまなビジネス誌がオンラインに進出し、多くの記事がWebでも読めるようになっている。

 今回は誠編集部の呼びかけに応え、「ダイヤモンド・オンライン」「東洋経済オンライン」「プレジデントロイター」という有力ビジネス媒体のキーパーソンに集まっていただき、「Business Media 誠」編集長を含め4名による座談会を実施した。「Webビジネスの難しさとは?」「紙媒体から移行して感じるネットメディアの特徴とは?」「オンラインビジネス誌のビジネスモデルは?」といったテーマについて、今、まさに現場で変化を体感している各誌のキーパーソンが率直に語り合った。

ah_zadankai.jpg 左から東洋経済オンラインの丸山尚文編集長、プレジデントロイターの中嶋愛副編集長、Business Media 誠の吉岡綾乃編集長、ダイヤモンド・オンラインの麻生祐司副編集長

媒体のカラーの違いは

――媒体のコンセプトや、主な読者層について教えていただけますか?

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吉岡綾乃(Business Media 誠編集長)

 Business Media 誠のコンセプトは「ニュースを考える、ビジネスモデルを知る」です。ニュースは世の中にたくさんある。それどころか、今はニュースが多すぎて、受け取る人が処理しきれないくらいですよね。あるニュースが報道された時、なぜそういう事象が起こったのか、その背景にはどういうことがあるのかを考えるコラム「時事日想」を、毎日掲載しています。

 また誠では、新しいビジネスの紹介にも力を入れています。私自身がITmediaというIT系総合サイトの記者出身ということもあり、例えば携帯電話や電子マネーといった情報通信系の事業の話題には注力して記事を掲載しています。特にSuicaやPASMO、EdyといったFeliCa電子マネーについての話題は、紙雑誌も含めてほかでは読めない深さ、ボリュームだと自負しています。

 さらに4月からは、ITmedia Biz.IDと統合して、誠はもっと大きなサイトになります。Biz.IDが得意とする、ライフハックGTDといった仕事術についての話題が誠で読めるようになりますので、ビジネスパーソンの方には非常に役立つと思います。

 想定している読者ターゲットは20代後半から30代のビジネスパーソンです。実際にその世代に読まれていまして、アンケートによると読者の9割が男性ですね。おそらく紙媒体のビジネス誌を買っている層より、少し若いと思います。もともと「誠」という名前を付けた理由は、「読者や取材相手に対して誠実であれ」という想いともう1つ、その世代の男性の名前でずっと1番人気が“誠”だったから、という調査結果※があるからなんです。

※明治安田生命が発表している「名前ランキング」による
ah_asou.jpg ダイヤモンド・オンラインの麻生祐司副編集長

麻生祐司(ダイヤモンド・オンライン副編集長)

 ダイヤモンド・オンラインの基本コンセプトは「ビジネスパーソンのためのWebマガジン」です。ただ、それだけでは特色が見えてこないので、現在、どうすれば差別化を図れるか社内で前向きに議論を重ねています。

 率直に言って、ウチに限らない悩みでしょうが、ビジネスメディアの差別化はどんどん難しくなってきている気がします。ビジネスパーソンも人ですから、必ずしもオンビジネスの情報に限定する必要はない。ですから、一般メディアとの垣根が年々低くなってきている。弊社の主力紙媒体である『週刊ダイヤモンド』自体、この15年ほどで取り上げる特集テーマの幅が驚くほど広がりました。

 1990年代初頭は、それこそ企業や産業別の特集が多かったのですが、最近はそれだけではなく冠婚葬祭や宗教など一見、ビジネス誌に無縁なテーマも多数取り上げています。もちろん、ビジネスメディアらしく、どんなテーマであれ収益性の視点を提示しているところに特色があるのですが、ビジネス誌というよりもビジネスパーソン誌になってきた。ただ、ビジネスパーソンもさまざまな知的好奇心を持つ人であるわけですから、テーマが広がるのは当然です。

 ダイヤモンド・オンラインに話を戻せば、そうした延長線上に立ち上げたので、ある意味アメーバ的に何でも取り上げていくような感じになっています。金融危機はもちろん伝えますが、メタボやスポーツ、男女の問題についても情報を発信しています。「ビジネスパーソンのためにオンでもオフでも情報を発信する」ということだけは決めておいて、後は読者が興味を持つ方向にわれわれが進化していけばいいと思っています。

ah_touyo.jpg 東洋経済オンラインの丸山尚文編集長

丸山尚文(東洋経済オンライン編集長)

 東洋経済は会社四季報という企業情報データベースと『週刊東洋経済』という雑誌が大きな柱になっています。企業情報の派生として就職情報なども提供しているのですが、そうした東洋経済が持っているさまざまな情報を集約して、ニーズに応じて提供しましょうというコンセプトでやっているのが東洋経済オンラインです。

 そのため東洋経済オンラインでは媒体ごとにページを分けているわけではなく、「ビジネス」「マネー」「ライフ」といったカテゴリーごとに分けて、記事を分類しています。ビジネスパーソンに読んでほしい記事は「ビジネス」、業績がどうなったとかマーケットがどうなるんだとかというような投資情報は「マネー」のカテゴリーに記事を上げています。

 ですから読者ターゲットは日々のビジネスのための情報を得ようとするビジネスパーソンと、投資家の方々です。志半ばではありますが、「株式投資をする前にはとりあえず東洋経済オンラインで何かしらの基本的な情報を得てほしい。投資した後も継続的に最新の情報を得てほしい」と考えています。チャート分析のツールも用意していますし、会員(無料)になれば場況情報や銘柄投資相談などのサービスも受けることができます。ただ、業績予想のようにコアの情報の部分は有料会員制で行っています。

 東洋経済の場合はオフの情報はそんなに多くはないですが、排除しているわけではなく、いい企画があれば積極的に出しています。Webはラフに情報を出しやすいので、人文、サイエンス系の軽めの話題であっても東洋経済オンラインの独自記事として掲載することを随時行っています。経済と離れていたり、ざっくばらんな議論を雑誌で掲載するのは少し難しいところがあるのですが、「若手記者・スタンフォード留学記」や「舞妓はんの言葉――心に「芯」を作る京都花街の教え」のような記事をWebで掲載すると意外に読まれたりしますね。

ah_pure.jpg プレジデントロイターの中嶋愛副編集長

中嶋愛(プレジデントロイター副編集長)

 プレジデントロイターのコンセプトは「ビジネスリーダーのための生き方サイト」です。「仕事とお金のワンストップ問題解決サイト」のようなものを目指しています。

 世界最大の通信社、トムソン・ロイターとの共同サイトなので、ロイターのニュース的な記事とプレジデントの読み物的な記事を1カ所で読めることが売りになっています。プレジデントロイターのサイトは2008年10月にオープンしたのですが、現時点では、コンテンツの8割ほどは雑誌の『プレジデント』のコンテンツを転載する形で使っています。

 そのため、雑誌の読者とオンラインの読者ターゲットは結果的にはかぶっている感じです。プレジデント本誌の読者ターゲットは組織の意思決定にかかわる層。富裕層が多いこともあって、例えば「お金特集」のような特集を本誌では頻繁にやっていますが、反響が大きいです。また、仕事熱心であると自己評価している人、勉強好きな人も多い。ロイターの読者とプロフィルは近いのですが、コンテンツ的には重ならないということで非常に良いパートナーシップになっていると考えています。

――プレジデントロイターでは経営層がメインターゲットになるということですが、ほかの3媒体ではいかがですか?

麻生 経営層だけを意識して特別にコンテンツをそろえているかというと、現段階ではそれはしていません。ただ、ダイヤモンド社には『ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー』というコンテンツがあって、それは主にマネジメント層を意識しています。しかしそれは『ハーバード・ビジネス・レビュー』という米国の雑誌の日本語版なので、別途サイトを設けて、ダイヤモンド・オンラインからは誘導枠を提供している形になります。

 トヨタとレクサスという2つのブランドを一緒にしても意味がないのと同じで、ダイヤモンド・オンラインとダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビューはそれぞれ別のブランドとして読者にアピールしていく必要があります。プレジデントロイターさんとは別の路線をとっているかもしれないですね。

丸山 東洋経済オンラインも、もちろん経営者の方も読んでいるとは思いますが、トップマネジメントにフォーカスしているわけではなく、もう少し広い話題を扱っています、社会やビジネスに関心のある中堅読者層以上が対象、その中に経営陣の方も含まれるという感じの作りです。

吉岡 誠は先ほど20代から30代くらいと言った通りの読者層なので、経営陣としてはまだ若すぎるような年齢でしょうね。ただ、仕事に非常に前向きとか、よりよい仕事がしたい、勉強熱心というところはあるようで、若いけどやる気があってまじめな人が多いと認識しています。

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