145億円で「一緒に元気になろーソン」――ローソンのam/pm買収会見を(ほぼ)完全収録(3/4 ページ)

» 2009年02月26日 16時26分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

2008年の8月くらいから話があった

買収の概要(出典:ローソン)

――今回の話はかなり前からうわさになっていたのですが、いつごろから話し合われていたのでしょうか。

新浪 レックスさんから「マネジメントインタビューをさせてくれ」ということで何度となくお会いさせていただいて、人となりを見させていただきました。面白い方々がおられるんだなと(思いました)。(2008年の)8月くらいからです。

――買収価格をディスカウントされている理由を教えてください。

新浪 このまま(コンビニ業界が)縮小均衡する大変難しい環境になるだろうなということ、今からずっと先まで引き延ばして(考えて)みると、大変厳しいというのを前提に(価格を)考えました。

――買収はいつぐらいからどれくらいローソンの業績に寄与するのでしょうか。

新浪 のれん代は約90億円発生します。20年で償却しますから(毎年)4億強のお金がコストとなります。業績的には若干(店舗を)クローズするとか、商品を入れ替えるということでコストが先行しますが、粗利の改善だけでも十分できると思っていますから、少なくとも来年度には十分利益を上げられると考えております。

――「出店が6000万円かかるところが2000万円で済んだ」というお話でしたが、2000万円というのはどのようにして計算した数値ですか?

新浪 2000万円はフル改装をベースとしたコストと考えています。詳細は申し上げられないのですが、基本的にはそういう採算でできると思っています。今の店を2000万円で買ったというより、きれいになった後を2000万円で(買った)という見積もりを考えています。

――本社の統合はどのようになるのでしょうか?

新浪 本社は早く統合するということが、この合併の大きな狙いです。ですから早々、2009年度内に統合するということで、本社をどこにするかとか、どのようにするかは協議しないといけないと思います。

――am/pmさんは米ARCOさんと(店舗出店の)ライセンス契約を結んでいると思うのですが、その話はどうなっているのでしょうか。

新浪 (詳しくは)申し上げられないのですが、大変少ない金額でライセンスをもらいます。だから、我々が今後懸念するようなリスクではないと考えています。

相澤 ARCOとの契約の内容は、日本での(am/pmの)展開権を我々が保有するというものです。日本での展開権の分として、2017年までの分を払い込んでおります。資本の変更に関しましても、我々もともとのジャパンエナジーからレックスへ、さらにMBOということで、彼らも資本の変更に関して十分に経験済みですので、今回の件に関して何か特別に大きな問題になるということはないと考えています。

ローソンオフィシャルWebサイト

am/pmが後れをとった理由

――これまでいろいろな株主のもとでam/pmという店をやってきましたが、これまでの取り組みは失敗だったのでしょうか?

相澤 失敗ではなかったと思います。なぜなら、先ほど新浪社長の方からもご説明いただきましたが、今の枠組みの中で何とか営業黒字体質、収益構造を変えられたからです。過去2年で、収益構造が40億くらい改善しました。ただ、ここから先を見据えたときに、「コンビニエンス業界の中で生き残るための最低ラインが上がらざるを得ないだろう」という読みを我々なりにしたということです。

 どういうことかといいますと、私たちは1000店強の店しかない。それに対してローソンさんは8600店ということで、物流上、商流上、さまざまなメリットがあることは確かです。小売業界、ほかの業界もそうですが、確実に最低ラインが上がりつつあるという時代背景がある中で、我々もその対象に当然なってくるだろうということです。

 今回の資本提携は相乗効果もあり、ガバナンスも品質が高まり、それから長期の経営視点をお持ちの同僚で、投資力もあるという意味では、我々にとっては簡単に言いますと「手放しで、いい経営環境を保持することができるのではないかな」ということで、「今までの枠組みからもう一段上の経営の枠組みにアップできるな」とは考えています。

――都心部の集客力が高いということですが、現在のam/pmの店舗の実力を教えてください。

相澤 既存店の売上前年対比ですと、今コンビニ業界の全体平均で107%程度と思います。それに対して我々は現状100をちょっと超えるくらいで、6.5ポイントぐらいビハインドしていることは事実です。

 ローソンさんともずいぶん話をさせていただきましたが、この6.5ポイントの差は大きく分けて3つビハインドの原因があると思っています。

 1つは都心での競争激化ということです。我々の従来の牙城だった都心で、一昨年の後半くらいから、ローソンさんを含むいろんな会社さんが出店ラッシュをかけたことで、もろに被害をこうむっているところがあります。その効果が約3ポイント、6.5ポイントのうちの3ポイントですから一番大きな影響かなと思います。

 2つめは投資不足です。(フランチャイズの)更新時に、常識的に言えば大なり小なり改装投資をしますが、過去3年で改装投資をした更新物件は基本的にゼロです。更新時に改装投資をしますと、大体既存店の前年比で6ポイント強ぐらいの売り上げ向上効果があります。これが200数十のお店でできなかったことで大体2ポイントぐらいダウンの効果がありました。

 3つめはtaspoがらみなのですが、我々後発組でタバコ屋さんからの転業が比較的少ないので、タバコ免許店の比率が67%です。業界で一番高いのがおそらくセブン-イレブンさんで、83〜84%くらいだと思います。15%以上の差があるということで、タバコ店の数が少ないということはtaspo効果が低いということで1〜1.5ポイントくらいの違いがある。合計で大体6.5ポイントくらいになるかなと思っています。

 今、現実には競合他社さんと比べて、既存店の前年比で実力値で6.5ポイントくらいのビハインドはありますが、これはどれも投資余力が足りないこと、あるいは歴史的にタバコの免許が少なかったということにあります。ローソンさんのグループになることで、改装(投資)もできるようになると思っていますし、競合に対応して出店することも可能になってくるかなと思っていますので、基本的には実力値は競合他社さんと比べて大きくビハインドしていないと考えています。

吉本 1点補足させていただきます。現状の日販は今48万6000円程度でして、客数は1日あたり1050人程度です。お調べいただければお分かりになると思うのですが、1000人を超えているチェーンさんは今ほかにないのではないかと思っています。首都圏ということで数字を申しましたが、九州などは前年比も同業他社さんより伸びておりますので、立地競合の影響が都心部においては(強く)出ているのではないかと思っております。

――都心部は飽和状態ということですが、現状で血を流さずに出店できるようなところはゼロに近い状況なのでしょうか?

新浪 一定の条件のもとで飽和状態だと(思います)。タイムコンビニエンスという、忙しい方を対象とした時間を買うことを前提にしたコンビニエンスはますます飽和状態が厳しくなります。お客さまたちは忙しくなくなっていくので。

 我々の実態を見ていきますと、生鮮ものとか料理をするようなものは大変売れるようになっているので、むしろそういう転換をすれば(新店を)出せる余地はまだあると思っています。九九(プラス)さんを中心に我々(ローソン)ストア100を約900店展開しているのですが、まだまだ(それらを転換して)出せると思っています。むしろそうやって転換した方が客単価が通常コンビニより高いので、コンビニとしてのマーケットシェアは上がっていく。ただし、今と同じような店を出している限りは飽和状態の条件はもっと悪くなると思っています。今のようなお店を出せる余地はもうありません。

――主要な取引先を教えてください。

相澤 卸の大きいところですと、国分さんと菱食さん。菱食さんは当然、あるいは国分さんもですが、ローソンさんの二大ベンダーだと理解しております。重なりが大変に大きいので向上効果があるかなと思っています。

――セブン-イレブンさんが加盟店の値引き販売を制限しているということで公正取引委員会から調査を受けていますが、御社の場合はそういう懸念はあるのでしょうか?

新浪 値引き問題というよりは根っこの問題だと私は思っています、要は信頼関係ですよね。私が今回(の合併で)気にしたのは自社競合です。そういったこと(自社競合)をやっていれば、本部との信頼関係が薄くなっていくわけです。

 私どもがそういった問題が大きくなっていないというのは、やはり信頼関係だと思うのです。今のように飽和(状態)が悪くなるような状況で同じ店を出していたら、(既存店から)「隣に何でたくさんローソンあるの」と怒られるわけです。「何だ、本部はおれたちの足引っ張りやがって」となるんです。そこに根っこがあるんです。「一緒にやろう」ということが欠けてきているのです。だから出店競争ではなく、オーナーさんを考えてやっていくことが大切です、ビジネスモデルがこのままだと壊れちゃいますよ。

――ローソンでは値引き制限問題は起きていないということですか?

新浪 (苦情は)基本的には直接私の方に上がってきますが、大きな問題にはなっていません。例えば野菜は早く売り切った方がいいので、逆に(売れ残る可能性があると)値引きして売るような指導もしています。

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