145億円で「一緒に元気になろーソン」――ローソンのam/pm買収会見を(ほぼ)完全収録(2/4 ページ)

» 2009年02月26日 16時26分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

コンビニ業界の3つの変化に対応して

am/pmの相澤利彦社長

相澤 am/pmジャパンは1990年から事業を開始したため、コンビニ業界後発組として事業を展開してまいりました。後発組であるからこそ差別化をしなければならないということで、もともとはジャパンエナジーのサービスステーションに併設する、あるいはその後都心に集中出店するということで、コンビニ業界において都心展開の先鞭をつけたと自負しております。

 それから電子マネーのEdyを最初に採用する、あるいはコンビニでATMを一番最初に展開する、あるいは世界の小売業で最初にISO14001を取得というような差別化戦略で今までやってまいりました。

 過去2年は実質的な株主が投資ファンドである中でリストラや、エーピー・エンタ(参照リンク)デリスタウン(参照リンク)といった新業態を展開してまいりました。新浪社長の方からも説明いただきましたが、何とか単体の営業利益ベースで黒字化することができるようになりました。

 「都心の賃料が高いから、家賃の負担が大きいのではないか」というような話はありますが、1店あたりの来客数ですと、我々はコンビニ業界で一番高い数字です。都心に集中出店しているからこそであると思っています。

 ただここまで来まして、最近将来を見通した時にコンビニ業界は「大きく3つの変化が起きるのかな」と考えております。

 1つは既存店の売り上げが低下していくこと。直近ですとtaspoの効果がありますので、(業績が)良いように見えますが、2007年まではコンビニエンス業界、8年連続で既存店の売り上げが前年割れしています。

 こういう環境で本部に求められるのは、例えば競争激化しても勝てるような店舗にする指導力、あるいは商品開発力、あるいはサービス企画力、そういう総合的な力が求められる時代というのがあります。

 2つめは、コンビニエンス産業が情報産業化していくということです。オペレーションの高度化に伴う出費のことで、サービスメニューの拡充に伴って情報端末が必要になる。(サービスの)高度化も必要だということです。ここで本部に求められるのは、サービス開発力、投資力です。

 3つめは業態間の競争が激しくなっていることです。スーパー、百貨店、ほか小売業の業態間で分かれていた市場の垣根がどんどん低くなり、コンビニの特権領域だったデイリーの領域もほかの業態からまたがれている。そういう環境下では、今後さらにサービス開発、あるいは業態の枠を超えた他社とのネットワーク構築といったものが必要になってきます。

 この3つの大きな環境変化を鑑みますと、当然ながら「我々の規模で本当に生きていけるのか」という経営上の課題が明確に浮かび上がってきているというのが事実でございます。

 そんな折に、初めて知る関係ではない新浪社長といろいろ話をさせていただく機会をいただいて、新浪社長からも「ぜひ一緒に元気になろーソン」と言っていただき、我々としても株主とご相談のもと、こういうことになった次第です。

 我々にとって今回の資本提携の意義を大きく4つに整理させていただいております。

 1つは当然のことながら相乗効果ということで、ローソンさんのグループが保持する商流、物流などのネットワーク、あるいは規模の経済というさまざまな面での相乗効果。特に首都圏ですと我々もお店をたくさん抱えておりますので、ローソンさんのお店と一緒になることによって物流、商流上のさまざまな規模の利益が発生するのではないかと思っています。また、先ほど申し上げました情報産業化と(いう面で)言いますと、ITへの大きな投資が求められる時代の中で、そういう固定費の削減、あるいは平準化ということも大きな効果があると考えています。

 2つめの意義はガバナンスです。ローソンさんは同業ということで、(コンビニ)事業を大変よく熟知されている会社が株主になるということで、当然経営のガバナンスのクオリティが上がると思っています。「相乗効果をどういう風に追求していくのか」といった面でのアドバイスをいただいたり、最終的な事業価値を向上させるための経営体制が、ガバナンス上も整うと考えております。

 3つめは、長期の経営視点です。コンビニエンス事業ではQSC(Quality、Service、Cleanness)、店舗運営向上が最終的には業績を上げていく要素になります。そのためには店舗スタッフのオペレーション、あるいはスキルの向上、あるいはお客さまとのコミュニケーション、そういったさまざまな面での長期視点での経営(努力)が必須という事業特性があります。新浪社長からQSCの重要性に関しても、どういう取り組みをされているのかの説明を随分受けさせていただいて、その辺のビジョンが一致すると確信しました。

 4つめは投資力です。我々は過去3年ぐらいの間、投資力が不足していました。その結果、店舗のハードウェアだけではなく、例えば人材の教育投資といったさまざまな領域での投資が不足していたことは否めない事実です。今回ローソンさんのグループと一緒になることで、新浪社長からも「必要な投資はするんだ」という言葉をいただき、今まで不足していた投資が復活できることで、業績向上につながるのではないかと考えています。

 以上、4つの資本提携の意義ということに基づいて、今回このような決断をさせていただいたということで、これからはローソンさんのグループの一員としてさらなる事業価値向上に向けて頑張っていきたいと思います。

新浪 若干補足させてください。私どもは「今後、出店をどんどんしていくコンビニはもうまずいな」と思っています。市場は飽和し、かつ不況はより深刻になっている中、今あるお店、今回のような取り組みをより一層業界内で加速をさせていくべきです。また、お客さまから(店舗が)なくなることによって文句を言われ、また(店舗を)作ることによって無駄なお金を使っていく。繰り返し作ったり、壊したり、いわゆる資金のムダをしているわけです。今回の取り組みが業界の再編などにつながるようなことになれば、よりムダもなくなると考えております。

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