コラム
» 2009年02月26日 07時00分 UPDATE

郷好文の“うふふ”マーケティング:逆境魂が生み出した、“人間がウリ”のコールセンター (1/2)

卓球で全日本チャンピオンにも輝いた小島のり子氏が経営するDIOジャパン。コールセンター事業を営んでいるのだが、手厚いオペレーター研修を行うことで魅力的な対応ができるような人材を育てているのだ。

[郷好文,Business Media 誠]

著者プロフィール:郷 好文

マーケティング・リサーチ、新規事業の企画・開発・実行、海外駐在を経て、1999年より2008年9月までコンサルティングファームにてマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略、業務プロセス改革など多数のプロジェクトに参画。 2008年10月1日より独立。コンサルタント、エッセイストの顔に加えて、クリエイター支援事業 の『くらしクリエイティブ "utte"(うって)』事業の立ち上げに参画。3つの顔、どれが前輪なのかさえ分からぬまま、三輪車でヨチヨチし始めた。著書に「ナレッジ・ダイナミクス」(工業調査会)、「21世紀の医療経営」(薬事日報社)、「顧客視点の成長シナリオ」(ファーストプレス)など。中小企業診断士。ブログ→「マーケティング・ブレイン」


 「コールセンター、“なんじゃそりゃ”という感じで始めたんです」

 朗らかに話すのは、DIOジャパンの小島のり子社長。2008年から開始した「お宿コールセンター」が旅館やホテルから好評だ。その販促パンフレットを見ると、「人件費の大幅な削減」「電話受付負荷の軽減」「利用客の囲い込み&リピーター化」「予約受付プロフェッショナルの対応」と、電話受付代行のコールセンターならどこでもアピールしそうなフレーズがならんでいる。

 だが、DIOジャパンのウリは単なる“電話代行”や“セールス代行”ではない。それはコストや効率一辺倒のコールセンターにはできない応対にある。“人間がウリ”なのである。

ah_oyado.jpg お宿コールセンターの販促パンフレット

ネットで完結できないことを人で埋める

ah_DSC00098S.jpg DIOジャパンの小島のり子社長

 今どきの旅行では、宿の予約はネットが主体。部屋タイプや食事メニュー、料金など多くの情報が手軽に入手できるからだ。だが、「宿で失敗したくない」と考え出すと、もっと細かいことが気になる。例えば、宿周辺のお店情報、食事時間のフレキシブルさ、実際の部屋の眺望、寝具は敏感肌にやさしいか、大浴場がくつろげるのか、エステを予約できるか、英語が通じるかなど、知りたいことは山ほどある。そんな時にはどうするか?

 早道なのは、直接宿に電話して聞くこと。だが、朝のチェックアウト時間にかけようものなら、なかなかつながらない。夜間に電話すると予約係はすでに退社、事情に疎い担当者が出てきて答えは得られず、ということにもなりがち。フロント係や予約係は意外に離職率が高いため、“売る体制”を整えられない宿は多い。宿が予約機会を逃す実態がここに見え隠れする。

 DIOジャパンのお宿コールセンターは、宿泊施設の担当者さえ知らないような細かい情報までマニュアルに整理して問い合わせに応える。「ネットでは完結しないこと」「ネットにはない細かいこと」を提供する“セールスセンター”なのである。しかもその外注委託の時給換算額はわずか194.4円〜222.2円(同社資料より)。“流通を上げること(売上増)”に自信があるので、小島社長は「定額契約よりも、成約ごとの成果報酬型の契約を勧めている」という。

オペレーターの“3泊4日宿泊体験”

 「予約増=売上増」を支えるのは、手厚いオペレーター研修だ。話し方や地理の勉強に始まり、2カ月かける研修の仕上げは、担当する宿泊施設への“研修旅行”である。契約先のホテルや旅館に3泊して、「食べる」「飲む」「買う」を実体験して、隅々まで知り尽くす。だからこそ電話口で自信を持って語れ、予約率が高まり、単価も上がり、予約客満足度がアップするのだ(契約形態によっては3泊研修は無い場合もある)。

 オペレーターが予約を取れなかった時は、スーパーバイザーとその都度対応を反省。そして分厚いマニュアルを改善する。その積み重ねが流通を増やす裏付けとなる。低コストだけがウリになる苦情受付主体のコールセンターとは一線を画す事業モデル。そこに至る小島さんの軌跡には、実に熱いものがあった。

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