フレームワークを超えたHonda Jet――新規事業参入の分析法「トラフィック・ライト」岡村勝弘のフレームワークでケーススタディ(2/3 ページ)

» 2009年02月20日 13時00分 公開
[GLOBIS.JP]

新規事業選択を4つの“信号機”によって行う

HondaJet(出典:本田技研工業)

 今回は、このHondaJetの事業性について「トラフィック・ライト」で検討してみよう。

 トラフィック・ライトは、アンドリュー・キャンベル、ロバート・パークの両氏が著した『成長への賭け』に紹介されている、新規事業選択の審査基準のフレームワークだ。この規準を使って新規事業プロジェクトを選択すれば、合理的な成功確率を有するプロジェクトに投資できるとしている。

 トラフィック・ライトでは、次の4つの質問について、「赤信号(ストップ)」か、「黄信号」か、「青信号(ゴー)」かを、それぞれ判断する。

(1)価値優位性

 わが社のこの新規事業は、「大きく優位」(青)、「優位性が低いかまたは不確実」(黄)、「大きく不利」(赤)のいずれの状況に置かれているのか。

(2)プロフィット・プール

 この新しい市場のプロフィット・プール(利益の貯水池)は、平均的(黄)か、「レア・ゲーム」(青)か、「負け犬」(赤)か。「レア・ゲーム」市場とは平均的な能力の企業であってもうまくいってしまう市場のこと。「負け犬」市場とは大半の競合他社が現在は資本コストをまかないきれていないか、将来そうなる可能性の高い市場のこと。

(3)リーダーシップ・スポンサーシップ

 この新規事業のリーダー(および親会社のスポンサー)は、競合事業のリーダー(スポンサー)よりも、明らかに優れている(青)のか、同じ程度(黄)か、劣っている(赤)のか。

(4)既存事業

 この新規事業が既存事業に与える影響は、相当のプラス(青)か、不確実(黄)か、かなりマイナス(赤)か。

 赤信号が皆無で、青信号が1つでもあれば、プロジェクトを進めるには十分と言うのが、キャンベルとパークの主張である。その一方で赤信号が1つでもあれば、プロジェクトは中止すべきとしている。

 なお、(1)の価値優位性の判断は少し複雑だ。自社独自の貢献度(実務レベル、親会社レベル)から、取引できる貢献度(%)と競合他社の独自の貢献度、新規事業を学習するコスト(実務レベル、親会社レベル)を控除する。

 (2)のプロフィット・プールも同様に入り組んでいる。「高収益を生み出すビジネスモデルの可能性(コストに見合う価値、損益分岐点売上に必要な市場シェア(%))」と、「高収益を生み出す産業構造の可能性(成長の可能性を考慮に入れた上での「5つの競争要因」)」、「自社がその市場でリーダーになれる確率」、「プロフィット・プールの規模を比較した試行テスト(商用化までにかかる時間を考慮)」、そして「ビジネスモデルの脆弱性(援助者の数、主要な変数への感応度)」を計ることとしている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.