iPodが発見したブルー・オーシャンとは――「戦略キャンパス」「4つのアクション」で分析岡村勝弘のフレームワークでケーススタディ(1/3 ページ)

» 2009年02月18日 07時00分 公開
[GLOBIS.JP]

「岡村勝弘のフレームワークでケーススタディ」とは?

グロービス経営大学院でベンチャー戦略の教鞭を取る岡村勝弘氏による連載。事業創造、変革の特筆すべき事例を取り上げ、ビジネススクールなどで学ぶフレームワークを用いながら、独自の視点で、そこから得られる学びを詳説する。

※本記事は、GLOBIS.JPにおいて、2008年6月18日に掲載されたものです。岡村氏の最新の記事はGLOBIS.JPで読むことができます。


 アップルの携帯デジタル音楽プレイヤー「iPod(アイポッド)」を知らない人は、もはやいないだろう。Windows 95の発売来、パソコンのプラットフォーム争いではウィンドウズ陣営に完敗した同社(当時はアップルコンピュータ、2007年1月に社名をアップルに改称)を、完全復活せしめた立役者である。2001年の発売来、急速に市場を席巻し、街行く人のイヤフォンをトレードマークとも言える白色のものに塗り替えていった。

 iPodは、どれほど売れているのだろう。調査会社のBCNが発表している携帯デジタル音楽プレイヤーの機種実売ランキングを見ると、1位から14位までは全てiPodシリーズ。15位から17位に、ようやくソニーのウォークマンシリーズが登場する圧倒的な強さを見せている※。同・調べによると2007年12月時点での日本の国内シェアはアップル54.8%、ソニー28.8%と、ソニーが追い上げを見せているものの、米国では依然、アップルが7割のシェアを握っているという。

※(編集注)2009年2月9日〜2月15日のランキングでもiPodシリーズは1位から11位までを占めている。

 売れているのは、プレイヤーだけではない。2008年4月4日、アップルは、同社のオンライン音楽・動画配信サイト「iTunes Store」が、ウォルマートを抜き、全米第1位の音楽小売業者となったことを発表した。iTunes Storeは、iPodユーザーらがパソコン上で使用する音楽再生・管理ソフト「iTunes」を通じ、600万曲(日本では500万曲)からなる世界最大のミュージックカタログを約5000万人の顧客に向けて提供。2003年4月の開設来(開設当時の呼称は「iTune Music Store」、日本では2005年8月にサービス開始)、40億を超える楽曲を販売してきた。

 米国証券取引委員会(Seculity Exchange Commission)による電子開示システム「EDGAR」で確認すると、2007年のアップルの売上高240億ドル、純利益34億9600万ドル(売上高純利益率14.6%)に占めるiPodのシェアは、iPod本体の売上高83億500万ドルに関連売上高24億9500万ドルを合算すると、売上高全体の45%にも達する。わずか5年前、2003年の同社売上高62億ドル(純利益6900万ドル、売上高純利益率1.1%)に占めるiPodのシェアは6.14%(iPod本体の売上高3億4500万ドル、関連売上高3600万ドル)であるから、パソコン「Macintosh」シリーズを中核としていたアップルの事業構造が、極めて短期間に大きく転換したことは明確に見てとれるだろう。

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