乗り捨て自由! ドイツのユニークなレンタサイクルシステム松田雅央の時事日想(2/3 ページ)

» 2009年02月17日 07時00分 公開
[松田雅央,Business Media 誠]

レンタサイクルの需要

 さて、本稿ではエコロジーと健康志向の高まりから近年見直しが進み、新たなビジネスとして発展を続けるレンタサイクルを取り上げる。

 レンタサイクルの最も一般的な需要は観光客であろう。天気のいい日には、速過ぎず遅過ぎない自転車のスピードが心地いい。小さい都市ならば昔ながらの貸し自転車屋が活躍するのだが、大きな都市になるとそれでは不十分になり、最近は「駅・停留所近く」「交通の結節点」「主要な観光施設近く」など数十カ所に無人ステーションを設置するシステムが主流となっている。

 この場合、利用者は借り受けと返却をタッチパネルの指示に従って行い、身分証明と支払いにはクレジットカードを使用する。このシステムであればレンタサイクルを返却する際、市街地に散らばるどのステーションを使ってもいい。

 しかし、最近のレンタサイクル需要は観光地に限らない。規模が大きい都市になれば仕事や日常生活での利用も十分考えられ、筆者も先ごろ訪れた商業都市フランクフルトで利用する機会があった。フランクフルト市街地は公共交通が充実しているので移動に不自由はないのだが、小回りが利く自転車は頻繁に乗り降りしなければならない市街地での用事にうってつけだ。

 今回フランクフルトで利用したレンタサイクル「Call-a-Bike(コール・ア・バイク)」は主要駅でレンタカー事業を展開するドイツ鉄道(DB)の子会社「DBレンタル有限会社」が2000年から運営しているもの(フランクフルトは2003年から)。同社は以前から「都市間の移動には鉄道」そして「駅から目的地まではレンタカー」という旅行スタイルを提案してきたわけだが、これにレンタサイクルを加え、列車に乗る前から降りた後まで旅をトータルコーディネートするのがコンセプトである。

Call-a-Bikeのレンタサイクル(フランクフルト駅前)

携帯電話が利用キー

 Call-a-Bikeのシステムは次の2点で極めてユニークだ。

 まず、登録・借り受け・返却まですべてを携帯電話で行うのが1点目。もう1つは、無人ステーションを一切置かず、レンタサイクルが市街地全体に散らばっているのが2点目。基本的に指定地域内であればレンタサイクルをどこに乗り捨ててもいい。

 具体的な利用手順は以下のとおり。

1.レンタサイクルの利用に先立ち、あらかじめインターネットなどを使って住所・氏名・身分証明番号(外国人ならばパスポート番号)・所有する携帯電話の番号・クレジットカード番号を登録しておく。使用時にはこの携帯電話がレンタサイクルの「利用キー」になり、暗証番号はここに送られてくる。

2.レンタサイクルの乗り捨て可能地域内で使用可能なレンタサイクルを探す。

3.車体に書かれた番号(コールセンター)に登録した携帯電話で電話する。番号の最後の4桁は各レンタサイクル固有の数字になっており、コールセンターは利用者と利用レンタサイクルを自動的に特定できる。

4.機械音声で読み上げられる4桁の暗証番号を、レンタサイクルの「小さな液晶タッチパネル」に入力すると開錠できる。買い物などで一時的に施錠した後、再び開錠する時も同じ暗証番号を用いる。

5.使用が終ったら、レンタサイクルを「交差点脇」に駐輪、施錠し、再びコールセンターに電話して駐輪位置を告げる。区域内であればどの交差点に駐輪してもいい。ドイツの住所は全て「通り名」なので、例えば「フランクフルト市内のケーニッヒ通りとライン通りの交差点」と言えば、場所を特定できる。

レンタサイクルの乗り捨て可能地域(フランクフルト市街地、左)、上が施錠状態で下が解錠状態(右)

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