「クラシック音楽に深く接してこなかった方にこそ聴いてほしい」――“魂のピアニスト”浦山純子氏あなたの隣のプロフェッショナル(6/6 ページ)

» 2009年02月06日 11時30分 公開
[嶋田淑之,Business Media 誠]
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クラシック音楽の新しい顧客層を開拓する

 日本のクラシック音楽愛好家には、CDを通じて過去の巨匠たちの演奏の聴き比べを楽しむ「CDコレクター」と、とにかくライブが好きという「コンサート・ゴアーズ」の2種類が主として存在する。年間に100万円以上使うようなヘビーなマニアの数は、前者・後者ともに2万5000人ほどいるという。さらに、年末に「第9」に行くだけとか、正月の「ウィーン・フィル・ニューイヤーコンサート」をテレビで見るだけといった薄い層まで入れると、クラシックファンは全国で100万人ほどと言われる。

「これまでクラシック音楽に深く接してこなかった人もターゲットとしたい」という

 浦山さんは今後、日本での演奏活動でどういう顧客層をターゲットにするのだろうか?

 「マニアの方々をターゲットとするのはもちろんです。しかし、特に私が重視したいのは、これまでの人生で、必ずしもクラシック音楽に深く接してこなかったような方々です」

 魂を揺さぶるような演奏と心温まるトークをきっかけに、自分の人生に目覚め、クラシック音楽の世界に目覚める人々がたくさん出てくることを彼女は願っているのだ。彼女の魂は、いつでも聴衆とともにある。主体としての自分と、客体としての聴衆が不可分一体の存在になっているという点で、彼女の生きる姿勢は仏教哲学にいう主客一如そのものであると言えよう。

 それにしても、大手音楽マネジメント事務所に所属しない彼女が、日本のクラシック音楽界で新市場開拓を実現するのはなかなか大変なのではないだろうか?

 「志を同じくしてくださる各分野の専門家の方々とチームを作って、そのチームを核にして活動していけたらいいと考えています」

 過去数十年、世界のそして日本のクラシック音楽市場は衰退・縮小を続けている。彼女の活動が、それを食い止める1つの突破口になれば、こんな素晴らしいことはないだろう。もし、本記事をお読みになってご興味をもたれた方がいらっしゃれば、是非、彼女のコンサートに足を運んでいただきたい。

 足を運ぶのはちょっと……と敬遠される方は、まず彼女の3枚のCDに耳を傾けてみてはいかがだろうか。

  • 「リサイタル(ショパン&ラフマニノフ)」(2003年)
  • 「ファンタジー(プーランク、ベートーベン&シューマン)」(2005年)
  • 「ソワレ(バッハ、ベートーベン、ショパン、シューマン、リスト、リムスキー・コルサコフ、ドビュッシー、クライスラ−、平井康三郎、などの小品集)」(2007年)

 これらは、浦山さんのWebサイトから購入可能で、いずれも素晴らしい演奏が収められている。浦山純子さんの今後の音楽活動に幸多からんことを願って筆を置くことにしよう。

浦山純子公式Webサイト

嶋田淑之(しまだ ひでゆき)

1956年福岡県生まれ、東京大学文学部卒。大手電機メーカー、経営コンサルティング会社勤務を経て、現在は自由が丘産能短大・講師、文筆家、戦略経営協会・理事・事務局長。企業の「経営革新」、ビジネスパーソンの「自己革新」を主要なテーマに、戦略経営の視点から、フジサンケイビジネスアイ、毎日コミュニケーションズなどに連載記事を執筆中。主要著書として、「Google なぜグーグルは創業6年で世界企業になったのか」「43の図表でわかる戦略経営」「ヤマハ発動機の経営革新」などがある。趣味は、クラシック音楽、美術、スキー、ハワイぶらぶら旅など。


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