とことん濃厚なカップめんは、不況時代のトレンドになるのか?それゆけ!カナモリさん(2/3 ページ)

» 2009年02月02日 07時00分 公開
[金森努,GLOBIS.JP]

1月20日 濃厚かスッキリ?今の時代に売れるモノとは

日清味の二重奏Wホワイト濃厚とんこつ麺

 景気の低迷は家計を圧迫し、生活者は生活防衛のため財布のひもを固く締めるようになった。そんな時代に売れる商品とは、いったいどんなモノだろうか。

 不景気は消費の低迷をもたらし、不要不急の消費は控えられる。商品の選択基準はより厳しいものになり、贅沢消費はまっ先に削られる。その次に来るのは嗜好品の買い控えで、そして、最後に来るのは食料品をはじめとした生活必需品の低価格帯への移行だ。大手流通のプライベートブランドが、隆盛を誇っているのもその表れだといっていいだろう。

 こうした環境下で、生活者にアピールすべく、製品特性を極端にした商品や広告が目立っている。

 まず、気になった商品は日清食品のカップ麺「日清味の二重奏Wホワイト濃厚とんこつ麺」。同社のニュースリリースによると、2009年1月26日に全国発売という。

 昨今のラーメンの流行は「2つの素材で仕上げるWテイスト」だというが、そのトレンドを巧みにとらえた同商品の価格は税別235円。カップ麺としては高価格帯狙いだ。

 顧客がある製品やサービスに対して適正と考える価格を、「カスタマー・バリュー」という。カップ麺のカスタマー・バリューは100円と言われる。2008年1月、日清食品のカップヌードルが原材料の高騰を受け値上げをし、量販店での売上が前年同月比40%減となったことは、記憶に新しい。一方で、そのカスタマー・バリューに適合するように、プライベートブランドは見事に88円〜98円の価格帯で商品を販売している。

 もはや価格勝負では、メーカーは独自商品を維持できない。「Wホワイト濃厚とんこつ麺」はフツーのカップ麺が設定している倍以上の価格を付け、プライベートブランドがどちらかといえば万人受けするあっさり味なのに対し、「特濃」という切り口で独自の魅力をアピールしているのだ。

 同じように「濃い味」で勝負に出た商品を、飲料でも見つけた。不二家の「ネクター濃い果汁 白桃」。同じく1月26日発売だ。同社のプレスリリースによると、国産の白桃を丸ごと裏ごししたピューレを40%も使い、「本物の桃を食べているような、濃く果肉感のあるのどごし」が特徴だという。290グラム入りの小型ペットボトル入りで税別147円。これもまた、量と価格のバランスでいえば少々割高の商品を、いままでにない製品特性をアピールして購入させようという戦略だろう。

 「濃い味」に対して、「スッキリ」で勝負する商品もある。

 カゴメの「野菜生活100 Refresh!」。「グレープフルーツ&レモン」と「青リンゴ&ライム」という、いかにもさわやかそうな果汁と野菜汁を50%ずつブレンドし、「これまでにないスッキリした味わい」を実現したという。スッキリ感にこだわるのは、同社が消費者調査をした結果、野菜ジュースの飲用シーンで、「お風呂上がり」や「気分転換がしたい時」という回答が大きく伸長しているからだという。つまり、野菜ジュースは「身体にいいから」「栄養が取れるから」という理由で飲まれているのだ、という先入観を一度クリアして、生活者のニーズの変化をとらえた結果だ。

 もう1つ、「スッキリ」の飲料がある。サッポロ「NEWドラフトワン」。「ビールより、スッキリ! が欲しい。」というキャッチコピーが印象的だ。さらに商品名とセットで「スッキリの代名詞」とまでうたっている。

 以前のコラムで、キリン「Sparkling Hop(スパークリングホップ)」を紹介した。ニュージーランド産ホップのフルーティーで華やかな香りをさらにグレードアップさせるとともに、よりすっきりした軽快な味わいに仕上げた、と2008年11月下旬に製品リニューアルを行ったものだ。「フルーティーですっきり」は、ビール離れが激しい若年層の取り込みを狙ってのことと分析した。

 一方で「NEWドラフトワン」。「フルーティー」という要素を歯牙にもかけず、ひたすら「スッキリ」という一点突破で勝負を挑んできているのだ。味わいよりもひたすら「のどごし」にこだわるターゲットに絞り込み、さらにメッセージも先鋭化するという戦略。

 ついつい、製品を提供する側としてはターゲットを絞り込むと、「そんなにターゲットはいるだろうか?」と心配になる。また、製品作りも「こんな特性も持たせたい」と欲張ってしまう。その意味からすると、新しいドラフトワンは、見事な割り切りをしているといえるだろう。

 カップ麺も飲料も、トレンドとしては普通の味ではなく、「とことん濃い」か「今までにないスッキリ」か、両極端に振れている傾向が見てとれる。その背後にあるものは、「普通の商品では戦えない」という環境下で、ターゲットを絞って独自のポジショニングを確立しようという戦略ではないだろうか。

 そして、いわゆる“普通の商品”が、幅広い生活者から求められるという時代が、いよいよ終焉を迎えたという風にも見えてくる。この4商品の売れ行きは要チェックだ。

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