今、個人輸入がアツい! Appleの想定為替レートが1ドル113円の理由新連載! 現役東大生・森田徹の今週も“かしこいフリ”(2/3 ページ)

» 2009年01月28日 07時00分 公開
[森田徹,Business Media 誠]

Appleの想定レートが1ドル113円台の「なぜ」

筆者が通学している東京大学駒場キャンパス

 ここからは筆者が愛するAppleを取り上げるが、いくつかの前提について確認をしなければならない。

 まず「消費税」である。先ほどはApple Storeに表記の数字をそのまま使ったが、思い出してほしい。日本は「内税」表示だ。すると消費税を除いて、20万4500円ほどが実際のAirの代金だ。一方の米国は外税表示であり、表示の数字に消費税は含まれない(米国の消費税は州や郡によって違い、0〜11%と幅がある)。

 ここで「日本のMacBook Air代(税引後20万4571円)÷米国のMacBook Air代(1799ドル)」で出るドル円レート「MacBook Air指数」は113.7円ほどである。実際に、このような同一製品に対する購買力を見る指数では、ビッグマック指数(日米のビッグマック代金「280円÷3.57ドル=78.43円/ドル」)が有名だが、iPod指数というのも提案されている。ちなみにiPod nanoで税引き後に同様の計算をすると、iPod nano指数も113円後半である(ところで、英国のAirは15%程度の消費税(VAT)の内税表示なので、製品のみの代金比較では日本円建てでもっと安くなる。消費税が高い分、法人税が安いので現地法人がもともとの製品を安く売れるというのもあるのだろうが、こんなに売りたたかれてポンドは大丈夫なのか……)。

 次に「通貨」である。Appleも米国の企業であるからには、財務諸表はすべて米ドル建てで勘定している。いくらグローバル企業を標榜しても、「SONY」は円建てだし、「ルイヴィトン」はユーロ建てだ。つまり、販売計画も自国通貨建ての発想でしか立てられないと考える方が自然である。

 さて、ここからはAppleのSEC(米国証券取引委員会)提出書類の中から、2009年1月23日提出の12月締め10-Q(四半期レポート)と、リーマンショック前の比較として2008年の11月5日提出9月締めの10-K(年次レポート)を見ながら考えてみたい。

 Appleのリーマンショック以前の1年間、2007年10月〜2008年9月の売上総額は324億7900万ドルである。このうち、日本での売上は15億900万ドルで、日本が売上の4.65%を占めている計算だ。ちなみに、2008年9月末のドル円レートは106円40銭ほどである。

 一方、リーマンショック後の3カ月間、2008年10〜12月の売上総額は101億6700万ドル、日本は4億8100万ドルで4.73%と微増している。そして、12月末のドル円レートは90円90銭ほどなのだ。

 また、2009年第一四半期の前年同期比の地域別売上高成長率を計算してみると、北米4.72%増、欧州12.14%増、日本20.25%増、アジア太平洋そのほか−8.67%となっている。もちろん、すべて米ドル建てである。

 さて、ここでAppleのワールドマーケティング部の社員にでもなったつもりで考えてみよう。

 もはや、世界同時不況は不可避の事態であり、特にテクノロジーセクターは厳しく、優良企業と目されるAppleでさえ売上が鈍化している。そんな中で日本だけは、円ベースでは売上が鈍化しているものの、円高ドル安の効果でドルベースの売上が大幅に伸びている。

 ここで、実際の為替の通り日本での価格を20%も下げれば、販売台数が25%伸びなければ円ベースでの売上はトントンにさえならない(1÷0.8=1.25という単純な割り算の問題である)。その分を英国で値段を上げる? いやいや、英国こそ大不況の最前線、だからポンドが売られているのだ。値段を上げたりしたら値段の上昇率以上にますます売れなくなるのは目に見えている。

 それなら現在の為替レートなんて無視して、今までどおりの想定為替レートで売って、日本に涙を飲んでもらおう! 日本って景気いいんだろう? という話になる。

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