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» 2009年01月23日 13時44分 UPDATE

神尾寿の時事日想・特別編:これもオバマ効果!? クルマの“電化”が急速に進むシナリオ (1/2)

深刻化する景気悪化の影響を受け、米国の自動車産業に“明るい”話題は少ない。しかし逆風が吹き荒れる中にも、光明が見え始めている。それはオバマ新政権が掲げた「脱石油」によって、急速にEVの存在感が高まっていることだ。

[神尾寿,Business Media 誠]

 今週は米国のオバマ新政権発足の話題で持ちきりだ。北米市場を筆頭とする世界同時不況、イラク撤退問題、そしてパレスチナ自治区ガザでのイスラエルとパレスチナの衝突など、新政権を取り巻く環境は控えめに言って「内憂外患」といったところだが、自動車産業の視座でもオバマ政権の動向は注目されている。

 その中でも最大の懸案となっているのが、昨年から経営危機に陥っている「ビッグ3 (GM、フォード、クライスラー)」の去就だ。オバマ氏は大統領選の中でも「米国の自動車産業を救済せよ」と強く訴えるなど、ビッグ3の救済措置に前向きな姿勢を見せていた。しかし、ビッグ3の経営構造はすでに破たん状態であり、さらに日欧の自動車メーカーと違い環境分野を中心とする技術革新に注力してこなかったことから、単純な救済措置には議会と世論が強く反発している。

 ビッグ3の破たんは、米国の雇用や消費者心理への影響だけでなく、日本の部品サプライヤーの経営をも直撃する。「ビッグ3の去就がどうなるか。それが分かるまで、来年度の予算も立てられない。まったく身動きが取れない状況だ」(日本の部品メーカー幹部)という。

 また、1月20日にはイタリアのフィアットが、クライスラーと資本・業務提携を発表。フォードが現在所有している「ボルボ」と「マツダ」を売却するというシナリオも昨年後半から多く取りざたされており、ビッグ3を取り巻く再編劇も続きそうである。

「グリーンニューディール政策」でEVの存在感が増す!?

 今の米国自動車業界の話題は、暗く重苦しい。しかし、その中にも光明も見え始めている。それがオバマ氏が掲げる、積極的な環境政策だ。

 まず、オバマ新政権ではブッシュ時代の「石油偏重」のエネルギー政策から大きく舵(かじ)を取り、環境重視の政策と、環境分野における経済振興を「グリーンニューディール政策」として掲げている。その手始めとして、環境関連事業に今後10年間で1500億ドルの予算投入を表明しており、この中には当然ながら、自動車分野での環境関連技術の革新も含まれている。

 今後、オバマ新政権がどのような形で「ビッグ3救済問題」を結着させるかは不明だが、いずれにせよ環境負荷の少ない“エコカーの開発と普及促進”を救済条件に盛り込むことは確実だ。また政策レベルでも、エコカーの普及と利用促進に向けたさまざまなインセンティブと、燃費の悪いクルマへの規制強化の流れになるだろう。

クルマの“電化”が急速に進むシナリオ

 そのような中で、日本メーカーは世界的に先行している「ハイブリッドカー」と「コンパクトカー」を武器に、北米戦略の立て直しを図る。特にトヨタ自動車の「プリウス」と、本田技研工業の「インサイト」はそのフラッグシップだ。また、西海岸を中心にマイクロコンパクトカーの「スマート」の販売台数が堅調に伸びており、トヨタの「iQ」も戦略的に投入されそうだ。

yd_toyota.jpgyd_honda.jpg トヨタの「プリウス」(左)、ホンダの「インサイト」(右、クリックして拡大)

 また、もう1つ注目なのが、北米における「EV (電気自動車)」の存在感の高まりだ。EVはハイブリッドカーよりも構造がシンプルであり、量産効果でバッテリー価格さえ下がれば、コスト削減・低価格化でもハイブリッドカーよりも有利だ。また既存の電気インフラが利用できるため、水素を使う燃料電池車(FCV)と違い、エネルギーの流通・供給インフラを新設する必要もない。

yd_iq.jpg トヨタの超小型車「iQ」
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