過去最大の赤字から立ち直れるか――ソニーの業績修正会見を(ほぼ)完全収録(7/8 ページ)

» 2009年01月23日 13時50分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

エンジニアのモチベーションは

――失業するかもしれない社員、特に閉鎖する工場の社員へのメッセージをお願いします。また、ソニーの経営陣、特にあなたご自身が現在の状況にどういう責任を取るべきとお考えですか?

ストリンガー 「ソニーを変革し、収益性を回復させること。それを急いで実施すること」が私の第1の責任だと考えております。最悪の景気ですから、収益を回復することが第1の責任である。10月時点では利益を期待していましたが、その後どんどん減益になったということで急がなければなりません。

 またソニーとして、社員に対して十分に配慮するという責任を会社は有しています。私どもとしては各国それぞれのルールを適用します。つまり、日本とフランス、スウェーデンではそれぞれルールが違うので、これに合わせて(人員削減の)プロセスを適用していきます。最も十分に配慮した対応をしてまいります。

 もちろん、失望される方もいらっしゃるでしょう。しかし、私どもとしてはしっかりしたプロセスで、対応していきたいと思います。いろんなステップを通って、日本の規則にしたがって進めてまいります。これは十分に注意を払って、我々全員にとって難しい今この時期に対応すべく、努力をしてまいります。

――先ほど「エンジニアがソニーのコアコンピタンスの1つである」とおっしゃいました。その上でエンジニアをもっとモチベートすることが必要であるとおっしゃいましたが、生産拠点の統廃合であったり人員削減、かつアウトソースの拡大でソニー内部でのオリジナルな設計というものが減っていく。こういうエンジニアにとってモチベーションが下がるような方向感がある中で、いかにしてエンジニアをモチベートされようと思ってらっしゃるのでしょうか?

ストリンガー (コスト削減のための)変革は仕方がありません。いかにこの変革をエグゼクティブが管理するかが、将来の成功を決めていきます。「人生というのは、変わっていくものなのだ」と。

 ソフトウェアのエンジニアの方が多くなり、ハードウェアのエンジニアの代わりをソフトウェアエンジニアがするといったこともあります。そして会社としては、ソフトウェアエンジニアリングの価値がもっと分かってきました。「その2つ(ソフトウェアとハードウェア)を組み合わせることによって、生き残って成功していく」というためには、お互いのコミュニケーションが重要です。

 企業の礎は、ハードウェアのエンジニアです。これは変わりません。より高度なエンジニアが必要になってくると思います。と言いますのも、ほかの国はほかの(簡単な)ことを、(安い人件費で)より安価に実現できるわけです。これはもう我々が何回も経験してきました。

 高度なエンジニアリングこそがソニーの価値です。そして、「ハードウェアのエンジニアとソフトウェアのエンジニアがもっと親密にならなければいけない」と思います。過去は別々の縦割りの組織に置かれていたわけです。

 私がソニーに来た時は、ほとんど関係がソフトウェアエンジニアとハードウェアエンジニアにありませんでした。例えばアプリケーションエンジニアとの間にもなかったが、今はソフトウェアエンジニアが非常に重要な役割を果たすようになっています。特に若い(ソフトウェア)エンジニアとハードウェアとの関係をもっと緊密化しなければいけません。

 汎用化の世界の中で競争していくためには、変わっていって戦略的な方向を目指さなければいけないわけです。例えば米国の西海岸(映画産業)とプレイステーションとハードウェアのエンジニア、そこも非常に親密になっています。ただもちろん橋渡しは必要ですし、時間はかかると思いますが、自明なことは「その関係を強化していかなければいけない」ということです。

 「ソニーは多くの教訓を学んできた」と思います。私どもはもうハードウェア会社だけではないわけです。ソフトウェア会社でもあり、娯楽のエンターテインメント、ゲームの会社でもあると。そしてそのすべてを1つに統合することによって、素晴らしい力になるということです。

 ラスベガスのCESでジャーナリストから「ソニーのいくつもの要素が、実際に一緒に協力できるのか」と聞かれましたが、協力できます。その基礎は、東京のハードウェアのエンジニアです。すべてのソニーの中の要素を1つに組み合わせて競争力を高めていく、それで日本の競合他社も、韓国勢とも、マイクロソフトやアップルとも戦っていく機会は大いにあると思っています。

 世界は急速に変化していますが、これは我々にとってチャンスです。すべての要素を1つにまとめることができれば、我々は無敵になります。真珠のネックレスのようなもので、1つ1つの真珠がしっかりつながっていることによって美しくなるわけです。「我々がネックレスになっているということがほかと違う」、差異化(できる)ということです。

 もちろんコストのコントロールも重要ですが、ソニーはクリエイティビティがあることによってダイナミックになるんだと(考えています)。そしてその要素はすべて社内にあるわけですから、人をいかに刺激して、そしてそれを融合させていくかが大事です。

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