過去最大の赤字から立ち直れるか――ソニーの業績修正会見を(ほぼ)完全収録(5/8 ページ)

» 2009年01月23日 13時50分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

構造改革はソニーを復活させるか

 3人のスピーチの後、1時間ほどメディアやアナリストからの質疑応答の時間が設けられた。ソニーからの要請で、質疑応答の際にはカメラでの撮影が最初の数分に限られた。フラッシュが回答者の集中力を妨げるのが理由という。ソニー側がそれだけ、今回の発表でナーバスになっていたことの現われだろう。

――これまでこれだけの厳しい決定をしなかったのはなぜでしょうか? そして今こういう決断をなさったのはなぜでしょうか?

ストリンガー 初めてこちらに参った時、ご記憶でしょうがそもそも会社のトップたちも私は知らなかったのです。そこでお互いを知り合うということに時間がかかりました。理解を深めるということに時間がかかり、そして関係を築いてまいりました。

 厳しい決断はいたしました。(営業利益率)5%という目標も2年半で達成することができた。今、しかし大きな嵐に見舞われておりますが、そういう厳しい質問は、2、3年前の状況が良かったときにすべきだったのかもしれません。2008年4月には雑誌などで「ソニーが好転した」と、「復活、再生した」と(書かれた)。これは嘘だったかもしれません。

 今回の規模の(赤字)を想定できた人はいないでしょう。もう、目からうろこと言うほどの状況(の変化)だと思います。したがって、特に日本企業にとってこういう難しい決断をするということは決して容易なことではありません。人々の生活、人生がかかっております。したがって状況が変わってしまったのだということで、中鉢、大根田とともに、私も現状を見直してきました。

 ただ、(ソニーには)それなりの強みもあると思います。

 次世代テレビ、つまりネットワーク接続型のテレビについては、私どもはいろんな経験を持っています。しっかり考えて進めていけば、例えばパナソニック、シャープ、サムソンと競合するだけではなく、ネットワークの分野のトップとも競争していくことができる、つまりはマイクロソフトなどと競争を展開していくことができるし、しなければならない。

 そして先行もしております。コンテンツ、テクノロジーを持っています。アップルでさえ、テレビのネットワーク化は成功していません。当社には、(テレビのネットワーク化に挑戦する)チャンスがある。今回のショックを生かして、その緊急感をさらに生かして(ネットワーク化の流れを)加速化させる必要があります。その結果として、より強い会社として、よりフォーカスの定まった会社として、再生できると考えます。

 当社はハードウェアの会社ですが、ネットワークの世界ではコンテンツも貴重です。サービスを強化するという考え方、多機能・マルチファンクションの製品もどうしても欠かせません。そういったところで再生をする、いい位置付けに当社はあると思います。もちろん努力は必要ですが。

――今の為替水準と売り上げの水準が続くとしても、2500億円の投資削減をやれば、中長期でソニーは収益が出るようになるということなのでしょうか?

中鉢 今回は、現時点で我々が最善の努力で出しうる対策(すべて)を出させてもらいました。それが大根田の方からお話しさせていただいた2500億円という数字でございます。

 この数字で「中長期的に私どもがグローバルに勝ち切れるコスト削減が十分である」という認識はいたしておりません。もちろん、為替状況あるいはビジネス状況についてもまだまだ不安定要因があるわけですが、これから追加的にいろんなことについては検討していくことになるかと思います。とりあえず緊急的な対応としてのまとめ、インパクトを大根田からお話しさせていただいたということでございます。

大根田 特に来年につきましては、先ほどストリンガーも申し上げました通り、春にこれらの構造改革に加えて、商品の競争力、限界利益をどうやって上げていくかということも含めて、その時点でご説明申し上げたいと思います。具体的な商品戦略を含めて、説明は次回にさせていただきたいと思います。

ストリンガー 「コスト削減それ自体が目的ではない」ということを申し上げます。今とろうとしている施策の狙い、「それは会社をより迅速に機敏にし、ダイナミックに競争力を高め、デジタルの時代に合ったネットワーク化された将来に合った会社に変えていこうということ」(です)。ネットワーク社会においてダイナミックな企業になれば、イノベーションも進めることができる、そして社員を鼓舞することによって現況から回復することができる。そしてソニーの収益性を持続的に回復させることができると考えます。

――来期に1000億を越える構造改革費用を計上されますが、黒字化はできるのか、できないとすればいつになるのか? できればテレビ事業の黒字化の目途と合わせて時間観を教えてください。

中鉢 来期のことにつきましては先ほど申し上げました通り、今度の春にもう少し具体的なことを申し上げたいと思います。したがって、「テレビ(事業)の黒字がいつになるかということについてもその時にお話させていただきたい」と思います。もちろん、テレビについても黒字を狙っています。

ストリンガー あるジャーナリストがこう質問しました。「何で12月にあんな(構造改革の)発表をしたのか」と。要するに「他社の後にやった方がソニーにとっては楽ではないか」との示唆がありました。

 しかし、私は社員に対して「これが緊急事態だ」という意識を植えつけたかったのです。私は米国にも住んでいますが、米国の方が悪化の兆しが早く出てきた。それによっていかにこれが緊急事態かということを実感しましたので、それを社員にもやはり知らしめたかった。「それ(社員が危機を認識すること)が回復への近道になるだろう」と思います。だからこそそういう発表をいたしました。その結果、そういった緊急意識、切迫感というものは、今(ソニー社員)みんな持っていると思います。こういった危機の時代には、それが大事だと思っています。

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