過去最大の赤字から立ち直れるか――ソニーの業績修正会見を(ほぼ)完全収録(2/8 ページ)

» 2009年01月23日 13時50分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

 これ(抜本的な改革)は商品企画の決定プロセスの合理化も含みます。当社は「新商品の導入に遅れることが多すぎた」と言えます。今後これは決して許せません。ソニーの基盤にあるのは、優れたハードウェアとそれを作る、優れたエンジニアたちでした。(ソニーの)コアコンピタンス、それはエンジニアのノウハウであり商品企画力、設計力、そしてブランドの力、またグローバルな広がりを活用するという専門能力でした。「コアコンピタンスに集約せずして、適正な収益を回復させることは非常に難しい」と言えるでしょう。

 また、エンジニアたちを鼓舞する新しい方法を考えなければなりません。競争に対する答えを探すことも大切です。重要な点はこれらの抜本的な改革は、今日お知らせしておりますコスト削減を上回る収益力の強化を実現させるものだということです。

 ソニーの若い社員は会社の直面する問題、そして現在の市場環境の厳しさを十分に理解しています。彼らの世界に対する見方も変わりました。彼らにとっては、ネットワークされた世界は遠いことではなく、デジタル生活の日常となっています。したがって商品企画の際にも、まず技術力を検討するのではなく、「その前に消費者が日々の生活の中でどういう製品を期待してらっしゃるのか」をまず考えます。その結果、ソニーはネットワークサービスに対応する商品こそ、今後長きにわたって差別化を実現し、そしてひいては事業が魅力的な収益を回復する上で必須であると十分分かっているのです。このような共通認識を持って、私どもは今後ソニーの製品を類似品の山に埋没するような製品ではない、際立った製品にしてまいります。

再生のための3つのポイント

ストリンガー 以上、申し上げたことを、3つの視点でまとめることができると思います。まず第1に世界のトッププレイヤーとの競争に打ち勝つために、主要カテゴリにおいてスピードと収益性に主眼を置いた事業構造の変化を図ってまいります。優位性を持つ業界では、商品の設計、製造、販売を自ら行いますが、一方で経済的、戦略的にそれが賢明と考えるならば、ほかの商品のライセンシング、あるいは外部委託もしてまいります。

 また、採算もシェアも取れていない事業の継続、あるいは撤退についても、一層厳しい判断をしてまいります。また、世界経済危機の影響を最小化するために、継続的にコスト削減を行ってまいります。

 そして、第3にエレクトロニクスにおける連携を強化してまいります。ハードウェアとネットワークサービスとの融合を加速していきます。デジタルエンターテインメントの世界で競い勝っていくために、コンピュータエンタテインメント、エレクトロニクス、それぞれの事業領域で迅速に動き、重複をなくし、リソースの共有化を図らなければなりません。すでに色々動きをとっております。例えばネットワークサービスチームのトップであるティム・シャーフは、平井一夫率いる組織と直接的に協力することとなりました。

 確かに今は大変厳しい試練の時です。しかし一方で、私どもは「その黒い雲が晴れた時に待っているチャンスの時代に備えなければならない」と考えております。事業構造の変革をなしとげた暁には、ソニーは柔軟性、資金力、そしてスピードを備えることになるでしょう。そして、それをもってネットワーク時代に優位な立ち位置を持つことになりましょう。

 エレクトロニクス、コンピュータエンターテインメントの連携を強化することによって、いくつかの重要領域で戦略的な動きをすることができるようになります。

 まず第1にテレビでありますが、テレビを従来の放送事業者が決めた一方的なエンターテインメントを提供するパッシブなディスプレイから、インターネットから直接さまざまなリッチコンテンツを引き出すことのできるネットワークエンターテインメントセンターに変えていく動きを加速いたします。

 また、ゲーム、エンターテインメント、デジタルイメージング※、テレフォン、そういったソニーの強みを生かして、次世代のモバイル機器のラインアップの充実を加速してまいります。

※デジタルイメージング……紙文書などをデジタル化する技術(ソニーではデジタルカメラやデジタルビデオカメラのことを指す)

 昨年、私どもが発表いたしました中期経営方針は変わるものではございません。しかし、今刻々と変わる世界の中で、私たちはそれをよりフォーカスを鮮明にして、迅速に行動することが必要になります。「まずコンセンサスを得ることが重要」という風習を打ち破ってまいります。

 ラスベガスのCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)でも示しましたように、ソニーはソニーならではのチャンスに恵まれています。本当の意味でのトータルなソニー体験を提供するチャンスが与えられているので、それを実現してまいります。ソニーの変革を進めていくにあたって、またこの春にでも進ちょく状況をご報告できれば、あるいは私どものいろいろな作業を、細かい内容までお話できればと思っております。

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