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» 2009年01月22日 10時36分 UPDATE

神尾寿の時事日想:VAIO type Pが先兵になるか――“カジュアルミニノートPC”の可能性

発表以来大きな話題となっているソニー「VAIO type P」。“いつでもどこでもカジュアルにモバイルPCを使いたい”層にフォーカスし、性能もデザインも十分なtype Pは、ここ数年ノートPC市場をけん引してきたネットブックとはまた違うカテゴリに属する製品といえる。

[神尾寿,Business Media 誠]

 1月16日、ソニーのミニノートPC「VAIO type P」が発売された。すでにアイティメディア本誌で様々なレポートやレビューが掲載されているので詳細は省くが、VAIO type Pはインテルの超小型PC用プロセッサである「Atom」を搭載し、長形3号の封筒とほぼ同等の本体サイズ(幅245×奥行120×高さ19.8ミリメートル)を実現したミニノートPCだ。重量も約634gと非常に軽い。超小型ボディながらキーボードの打ちやすさにもこだわったのが特徴で、Webブラウザを2つ並べてサイトを表示できる解像度(1600×768ピクセル)を持つ8型ワイドの液晶ディスプレイも搭載している。ソニーではVAIO typePを「ポケットスタイルPC」と定義づけている。

 →これは理想の低価格ミニノートPCなのか!?――「VAIO type P」徹底検証(前編)

 →これは理想の低価格ミニノートPCなのか!?――「VAIO type P」徹底検証(後編)

 →「VAIO type P」を動画でおさらいする

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 VAIO type Pは一見すると、昨年から急成長している低価格なノートPCの新セグメント「Netbook(ネットブック)」に似ている。ネットブックはASUSTeKの「Eee PC」が草分けとなり、昨年を通じて急成長。インターネットサービスのトレンドがWebサービスにシフトしたことと、イー・モバイルなどデータ通信サービスに注力する携帯電話キャリアがUSBデータ通信モジュールとのセット販売を行ったことなども追い風になり、ノートPC市場の中に「低価格モバイルPC」という軽自動車に似た市場を作りだした。

 ソニーのVAIO type Pは、本体サイズや下位グレードで10万円を切るプライスといったところは、ネットブックのコンセプトに類似している。しかし、VAIO type Pはネットブックの規格とは異なる仕様を採用しており、デザイン性や質感を重視し、バッテリー持続時間が長いといった特徴を持つ。さらに標準的なグレードでは10〜14万円前後となる価格設定など、ソニー自身が「これはネットブックではない」と強調するように、新たなモバイルミニノートPCを目指した製品になっている。

type Pの登場で厚みを増すミニノート市場

 従来のネットブックは「いつでもモバイルPCを使いたい」をリーズナブルに実現する軽自動車。それに対して今回のVAIO type Pは、コスト意識はあるものの「必要十分な性能で、デザインのよいモバイルPCがほしい」というニーズに応えるコンパクトカーのような製品だ。パナソニックのLet'snoteに代表される高付加価値・高価格のモバイルノートPCに比べれば性能は劣るが、ネットブックのようなチープさはない。“いつでもどこでもカジュアルにモバイルPCを使いたい”層にフォーカスしたという点で、“音楽をカジュアルに持ち出す”ために作られたウォークマンに通じる革新的なプロダクトと言えるだろう。VAIO type Pの登場でミニノートPCはこれまでの「通好み」の市場から、女性も含む一般ユーザー層にまでリーチできる厚みのある市場になりそうだ。

 以前のコラムでも書いたが、ミニノートPCやネットブック市場の拡大と一般化は、ワイヤレス通信技術/インフラの高度化と、PC利用ニーズのWebサービス移行を追い風に、持続的なトレンドになる可能性が高い。VAIO type Pのようにデザイン性が高いプロダクトが登場し、市場の裾野が広がればなおさらだ。このようなトレンドは、携帯電話キャリアの新たなデータ通信市場としてだけでなく、将来的に“携帯電話のハイエンドモデル市場やスマートフォン市場とどのように競合し、棲み分けるのか”も含めて注目していく必要があるだろう。

 ところで蛇足になるが、筆者もVAIO type Pの魅力に負けて、Sony Styleで同機のオーナーメイドモデルを注文した。予約の受付開始日に注文したのだが、納期は2月中旬。VAIO type Pは店頭モデルも大人気となっているが、それによる品薄がちょっと恨めしいところである。

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