南極越冬隊は何を食べているのか――南極越冬隊調理担当・篠原洋一さん(前編)嶋田淑之の「この人に逢いたい!」(2/5 ページ)

» 2009年01月18日 00時25分 公開
[嶋田淑之,Business Media 誠]

日本南極地域観測隊の歴史とは?

基地ではさまざまな観測が行われる

 1956年に、旧海軍の特務艦を改装して完成した南極観測船「宗谷」で第一次隊が南極に行って以来、「ふじ」「しらせ」と船は代を重ねつつも、日本の南極観測は、継続的に実施されてきた。

 映画「南極物語」で有名になった犬の「タロ&ジロ」の生存を確認したのは、1959年の第3次隊だ。1967年の第9次隊は、史上9番目となる南極点到達を実現。その後1979年、第20次隊が初の月隕石を発見。1982年には、日本の研究者が「オゾンホール」を発見し、地球環境の解明に著しい貢献をなした。

 観測基地も、1957年に開設された「昭和基地」(平均気温マイナス10.5度、最低気温マイナス45.3度、最高気温10度、建物56棟)を中心にしつつ、今では「みずほ基地」(1970年開設、標高2230m、平均気温マイナス32.5度、最低気温マイナス61.9度、最高気温マイナス2.7度)、「あすか基地」(1985年開設、標高930m、平均気温マイナス18.3度、最低気温マイナス48.7度、最高気温0.5度)、「ドームふじ基地」(1995年開設、標高3810m、平均気温マイナス54.3度、最低気温マイナス79.7度、最高気温マイナス18.6度)と、その拠点を増やし、活動の幅を拡大・充実させている。

 日本の南極観測は、1959年に日・米・露・英など12カ国で締結された南極条約に基づき、国家事業として推進されてきた。観測内容は主に以下の5種類だ。

  1. 宙空系研究観測(地球に流れ込む巨大な太陽風エネルギーの解明〜オーロラなど)
  2. 気水圏系研究観測(地球環境を監視する研究で上記のオゾンホール発見が代表例)
  3. 生物系研究観測(ペンギン、アザラシ、オキアミなど、南極の生態系の研究)
  4. 地学系研究観測(南極は、地球のプレート運動の原点であり、重要な観測ポイント)
  5. 定常観測(電離層観測/気象観測/測地、重力観測/海洋観測)

オーロラの美しさは「百聞は一見にしかず」

 篠原さんは南極越冬隊を志願した動機をこう語る。「とにかく、『百聞は一見にしかず』でオーロラを見たかったんですよ。そして、実際に見た時には『俺はこれを見るために来たんだ』という感動に胸が打ち震えましたね。発電機のグオーンという音、氷のピシッという音、風のピューッという音、そして空にはオーロラ……その神秘的かつ圧倒的な素晴らしさは、テレビや写真で見るのとは比較になりません。氷山の氷を入れたオン・ザ・ロックを飲みながら羽毛服をかぶって眺めましたが、あの感動は一生忘れません」

 オーロラだけではない。南極では、意外なものまで見えるようだ。「オーロラ撮影会をやっていると、実は人工衛星がよく見えるんですよ。ある時、ひときわ光り輝く衛星らしき物体が見えたので『あれは何だ!』って調べてみたら、それがなんと、毛利衛さんが搭乗するスペースシャトル『エンデバー号』だったんです。あとは、そうですね。大マゼラン星雲が見えた時も感動しましたねぇ……」

インタビュー中、篠原さんは何度となく「オーロラのあの美しさは、本当に見た人にしか分からないです」と話していた

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