インタビュー
» 2009年01月18日 00時25分 UPDATE

嶋田淑之の「この人に逢いたい!」:南極越冬隊は何を食べているのか――南極越冬隊調理担当・篠原洋一さん(前編) (1/5)

2008年12月25日、第50次日本南極地域観測隊が出発した。1年3カ月間という滞在期間中、南極越冬隊の胃袋を支えるのが、調理担当の篠原洋一さんだ。ここでは2回にわたり、彼らがどんな活動をし、どんなものを食べているのかを篠原さんに聞いていく。……ひょっとして、ペンギンを食べたりするのだろうか?

[嶋田淑之,Business Media 誠]

嶋田淑之の「この人に逢いたい!」とは?:

 「こんなことをやりたい!」――夢を実現するために、会社という組織の中で目標に向かって邁進する人がいる。会社の中にいるから、1人ではできないことが可能になることもあるが、しかし組織の中だからこそ難しい面もある。

 本連載では、戦略経営に詳しい嶋田淑之氏が、仕事を通して夢を実現するビジネスパーソンをインタビュー。どのようなコンセプトで、どうやって夢を形にしたのか。また個人の働きが、組織のなかでどう生かされたのかについて、徹底的なインタビューを通して浮き彫りにしていく。


誰もが知っていて、誰もが知らない南極越冬隊

ay_snhr01.jpg 第33次、第50次日本南極地域観測隊の調理担当、篠原洋一さん

 「南極観測隊」とか「南極越冬隊」という言葉は、昔からよく耳にする。毎年、日本を初め世界各国が、そうした部隊を南極に送り出していることも皆、知識として知っている。しかし彼らが、南極で日々どのように活動し、そしてそれがどのような成果を挙げているのか、実際には何も知らない人がほとんどだろう。

 南極観測隊は南極で何をしているのか? そんな我々の素朴な疑問に答えてくださったのが、篠原洋一さん(46歳)だ。篠原さんは、以前南極越冬隊の調理担当として実際に1年3カ月に及ぶ南極生活を経験し(第33次隊)、今回再び第50次隊の調理担当として南極へ出発した人物である。

 見た目はちょっとふくよかで、かつては「ブー」という愛称で親しまれ、今では「南極のホッキョクグマ」と呼ばれることもあるという、人懐っこい笑顔が実に魅力的な男性である。2008年12月25日の出発を目前に控え繁忙を極める中、篠原さんは長時間にわたり、東京都板橋区にある国立極地研究所で、南極生活やそこでの食生活について、楽しく、そして熱く語ってくれた。

一番の楽しみである“食事”を担当

 「南極観測隊は、3カ月ほどで帰国する、いわゆる夏隊(通称「日帰り」)と、1年3カ月にわたり現地で活動を続ける越冬隊(通称「1泊2日」)に分かれます。夏隊と越冬隊のいずれも、雪と氷に閉ざされた環境の中ですから、隊員たちにとっては食事が最大の楽しみなんですよ。ですから私は、調理担当として、その大事な食事のことで彼らにストレスをかけないことが何よりも大切だと考えています。その証拠に……と言いますか、『XX次隊は食事が良かったが、XX次隊の食事はね……』なんていうことが、後々何年も後に言われたりするんです。責任重大ですよ」と、恰幅の良い体を揺すって豪快に笑う。

 南極観測隊には、どのような人々が参加しているのだろうか?

 「平均年齢で言うと34〜35歳くらいでしょうか。(今回の第50次隊では)一番若い人で30歳、一番の年長者が52歳です。独身者が約半数。女性もごく少数ですが参加します。専門分野的には、観測系と設営系に分かれています。観測系は研究者グループですね。それに対して設営系は、機械関係の技術者や通信士、私のような調理師、医師、環境保全技術者、その他技術者からなります。合計人数は年次により異なりますが、おおむね30人前後ですね(今回の第50次は28人)。

 これだけ多様な顔ぶれですので、当然“食”へのニーズも多岐にわたります。ですから私としては、予算の範囲内ではありますが、そうした隊員たちの誰もが満足してくれるよう、メニューにも様々な工夫を凝らすわけです」

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