都市の中に緑の山を――文化施設「アクロス福岡」ECO建築探訪(1/2 ページ)

» 2009年01月16日 07時00分 公開
[水谷義和,Business Media 誠]

水谷義和(みずたによしかず):ウッドノート代表取締役。1995年早稲田大学理工学研究科建設工学(都市環境)修士課程修了後、竹中工務店に入社。東京ドームシティLaQua(ラクーア)や汐留芝離宮ビルディングなど省エネ施設の企画、設計に数多く携わる。2003年には、世界ガス会議・環境調和型都市デザイン国際コンペで、日本代表選考コンペ優秀賞受賞。2005年に竹中工務店を退職し、竹中工務店の同僚と2005年にウッドノートを設立。建物・環境・エネルギー・ファイナンスの専門医として、建物・施設の健康管理および価値向上のサポートを行っている。


 福岡県の天神にある「アクロス福岡」をご存じだろうか。アクロス福岡は、1995年に福岡県庁跡地を国際・芸術・文化の交流拠点として再開発した公民複合施設である。コンサートホール、展示ホール、国際会議場、オフィス、商業店舗などがあり、国内外のクラシックコンサート、絵画の個展、伝統工芸品の展示などが開催され、日々の喧噪(けんそう)を忘れさせてくれる空間を提供している。

 14年前、都市の中に造られた時は、まだコンクリートの塊という印象でしかなかった。しかしその後、コンクリートの塊は、時間を経るとともに緑の“アクロス山”として成長し続けている。もし近くに行く機会があれば、是非一度登ってみて頂きたい。街中の建物を歩いているとは思えない体験ができるはずだ。

アクロス福岡 ステップガーデン

都市の中に緑の山を

 芸術・文化施設は国内にも数多く存在するが、用のない人にとっては何か近寄りがたい雰囲気を呈していることが多い。「近くにあることは知っているが、行ったことがない場所がある」という方も多いのではないだろうか。

 都市はコンクリートやガラスで構築された無機質な建物が密集しており、息苦しいと感じることも多い。そのため、リフレッシュするために海や山などに出かけることがあるだろう。

 アクロス福岡の素晴らしい点は、単なる芸術・文化の交流拠点となっているだけでなく、目的をもって訪れる人以外の都市生活者にも安らぎと憩いを与えている点だ。季節によって色が変わる、野鳥や虫の音色が聞こえる、草花の香りが風に乗って漂うといった、これまで都市が失ってきたものをアクロス福岡は建物自体で創造しようと試みている。都市の中に緑の山を年月をかけて育んでいるのだ。

アクロス山 登山道中腹からみた光景

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.